競争が嫌いなのか苦手なのか
ゲームをするとき、自分に有利な武器を手に入れることで勝利が容易になる。勝つためにその有利な武器を探すことに必死になる人と、苦戦を楽しみ危機を打開することを楽しむ人がいる。
ゲームに勝つ瞬間の快感を味わうことがゲームの目的ではあるけれど、ゲームそのものの楽しみを楽しむか、ただひたすら勝つことのみに執着するかで楽しみ方もずいぶん違う。
気力が落ちているときはただ勝つことに執着することが多く、気力が横溢しているときは自ら危機を楽しむようだ。
トランプ次期大統領はイギリスのEU離脱を歓迎し、EUやNATOについて批判的である。同時に中国の擡頭も不快に感じているようである。そのついでに日本までやり玉に挙げられている。
世界は競争で発展してきた。その競争はときに戦争という悲劇をもたらしたが、いま世界の多くの人が昔より豊かであるのは競争の末にもたらされた科学や政治システムのお陰に負うところも大きい。悲惨な失敗の果てに自由な競争こそが世界に利益をもたらすことを知ったのだと思う。
トランプはアメリカファーストだという。これは小池都知事の都民ファーストとはずいぶん意味合いが違って、アメリカさえ良ければいいという考えのようだ。いままで築かれてきた自由な競争というルールを変更し、自分たちだけが勝てるようなゲームを始めようとしているように見える。
そもそも彼は自分に敵対するものを嫌う。今は次期大統領としてアメリカに敵対するものを嫌う。EUも中国も日本もアメリカの敵だと思っているのだろう。その敵に力があることが不愉快なのである。自分と対等であることなど許せないと考えているようだ。
そんな考えであれば、EUもTPPも存在が許せないものに見えることだろう。たぶんロシアや北朝鮮は泡沫敵対者で、敵として認識していないに違いない。敵と認識したら攻撃するだろう。
然らばトランプは競争に強い人物なのだろうか。競争に強い人物なら相手が強いことを嫌ったりしない。たぶん競争が嫌いで苦手な人物なのだろう。だから絶対に勝てるルールを打ち立てようとするし、正当な競争ではないところで相手を貶めて蹴落とすことに努力する。それでたまたま結果的に成功してそれを成功体験として身につけてしまった人物なのではないか。競争の問題ではないけれど、あの記者会見のときに記者の質問を聞こうとせず、相手を「嘘つき」と決めつけていた姿に彼の正体が見えた気がする。
つまり実際には弱い人間だということだ。弱い人間が都合がわるくなって窮地に立つとどんなに卑劣になるか、それは人生経験のある人間なら想像がつく。
彼が失敗して窮地に立ったとき、彼がどんな行動をとるのかと思うと恐ろしい。アメリカ人は彼を強者と勘違いしている。その化けの皮はすぐ剥がれるだろう。
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