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2017年1月30日 (月)

映画「大鹿村騒動記」2011年

 監督・阪本順治、出演・原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、石橋蓮司、小倉一郎、三國連太郎、瑛太ほか。

 この映画の企画は、テレビドラマでここを訪れた原田芳雄がこの大鹿村の大鹿歌舞伎を題材に映画を作りたいという思いから持ち込んだもの。この映画の公開三日目に原田芳雄は死去。病と闘いながらの演技であり、映画は彼の遺作となった。

 以前から観たいと思いながら機会を得なかったが、少し前にNHKBSで放映してくれた。だいたい思い描いていた通りの映画で、私にとって記憶に残るものの一本になった。

 リニア新幹線が近くを通ることが村の話題になるなか、大鹿歌舞伎の公演も間近となり、村人は稽古とリニアの話で騒然としている。そんな時、駆け落ちして村を出ていた治(岸部一徳)と貴子(大楠道代)が村に戻ってくる。貴子は大鹿歌舞伎の演目の主役・景清を演じる風祭善(原田芳雄)の妻であったが、善の親友の治と駆け落ちして18年が経っていた。

 善は離婚届を出していないので、貴子はいまでも善の妻、風祭貴子である。その貴子は認知症になってしまい、その面倒が見きれなくなった治は貴子を連れて村に戻るしかなくなったのだ。

 奇妙な3人の生活が始まる。スイッチが入ったり切れたりする貴子は善と暮らしていたときのままであったり、まったく別の人であったりする。

 こうした中で歌舞伎の公演はいよいよ迫り、稽古にも熱が入る。ところが思いもよらないアクシデントが起こり、女形として重要な役を演ずる予定の一平(佐藤浩市)が事故で演じることが出来なくなる。

 もともとこの役は貴子が演じていたものであった。認知症の彼女には代役を務めることが出来るはずはないと思っていると、何と彼女は台詞や所作を記憶していた。ただ肝心のときに彼女が役をこなせるかどうかは心許ない。

 その彼女は不思議なことにその役柄を演ずることになってほぼ普通の生活が営めるようになる。

 そして歌舞伎が始まる。

 それがどうなるのか。それは映画を観てのお楽しみだ。

 芝居が終わり貴子が真に自分を取り戻したとき、彼女はすべてを思い出し、どんな言葉を発したか。

 優柔不断とやさしさとは同じようで違い、違うようで同じである。やさしさには強さが必要だ。優柔不断はときに弱さから発する。しかしそれをしなやかに受け止めてやり過ごしたとき、やさしさとなる。この映画のやさしさは胸に来る。

 治が貴子を村に連れ戻したのは自分勝手な行為ではあるけれど、病んだ貴子はこの村のやさしさの中でしか幸せに生きられないことを感じたからだろう。保育園は子どもの声がうるさいから迷惑だ、などとわめき立てる人々にはこのやさしさは理解できないに違いない。

 貴子を演じた大楠道代についてはいろいろ思いがあって、書き出すときりがないので、良かった、だけにしておく。もちろん原田芳雄はすばらしい。自分の生きざまや思いをこの役柄にすべて込めて力演していた。身体は辛かっただろうが、幸せだったのではないか。

 もって瞑すべし。

 蛇足ながら、親子共演した佐藤浩市と三國連太郎も話題になった。その三國連太郎も鬼籍の人である。

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コメント

好きな映画です!
原田芳雄も好きな俳優でした。
聖地巡礼ではないですがw
ドライブで大鹿村を通ったついでに
歌舞伎の舞台になった神社に立ち寄ってみました。
あの温泉宿でつくっている塩は土産にしました。

wani様
そういえば塩分濃度の高い温泉を煮だして塩を作っているのをテレビで観たことがあります。
大鹿村の近くなのですね。
私も一度訪ねてみたいと思います。

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