忙しい
忙しいといっても、御仕事ではなくて遊びに忙しいのだから申し訳ないことである。そういえばリタイアして毎日が日曜日になったばかりの頃、普通の日にぼんやりしていると焦燥感にあぶられる思いがしたものだ。なんだか仕事をさぼっているときのやましさのようなものに襲われるのだ。だから土日になるとほっとした。
だんだん薄れているとはいえ、その気持ちはたぶん一生消えないかもしれない。
と言い訳をした上で、本文に入る。
NHKBSで「雲霧仁左衛門」の第三シーズンが始まった。映画では仲代達矢が演じた雲霧仁左衛門を中井貴一が演じている。わるくない。欲をいえばもう少し影が欲しいところだが、中井貴一は軽みが持ち味だから、ない物ねだりだろう。以前、七化けのお千代を演じている内山理名をほめた。映画では岩下志麻が演じたこの役を、全く違うキャラクターとして演じている内山理名がとても魅力的で今回もうっとり見ている。
映画ではほとんど池波正太郎の原作に忠実に描いていたけれど、このドラマではかなり脚色されている。この第三シリーズはほとんど原作と離れてしまう気配だ(まだ第二回までしか見ていないので)。しかしストーリーが離れるだけで、キャラクターは忠実なので、知らない新しい話として楽しめそうだ。
原作と離れると言えば、「陽炎の辻(居眠り磐音)」シリーズの完結編をNHKが正月のスペシャルドラマとして放映していた。佐伯泰英の原作を読んでいない人にとっては、これはこれで面白かったことだろう。しかし原作を知っていると興ざめである。連続ドラマのときのキャラクターがその後どれほどの辛惨を舐めたのかが描かれていないので、敵役の田沼意次への恨みの深さが表現できない。恨みが深いところを暴挙に出ずに耐えるエネルギーこそが磐音の真骨頂であり、その暴挙を決行してしまう佐野善左衛門との対比こそが物語の肝であろう。
スペシャルドラマではシリーズのキャラクターイメージを壊さないよう連続性をもたせているけれど、時間とその間の成長が描かれていないのがこの物語を愛する人間として不満であった。
その坂崎磐音の息子、空也が主人公である物語が始まった。「声なき蝉 上・下」が双葉文庫から出版されたのだ。空也十番勝負・青春編と銘打たれている。佐伯泰英を読むのにも飽きてきたので当分手を出さないつもりでいたのに、気がついたらレジの前に持って行っていた。ドラマを観なければいけないし、旅番組も観なければいけないし、本も読まなければいけないし、忙しいという訳である。
« 不明を恥じる | トップページ | 山のようにいて、一握りしかいない »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 贅沢な料理(2025.01.13)
- 返事がない(2025.01.13)
- お茶と漬物(2025.01.12)
- 手の平側の指の根元を(2025.01.11)
コメント