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2017年1月28日 (土)

名言

 「ひとりの男がアメリカを偉大にさせることなど出来ない。しかし、ひとりの男がアメリカを偉大ではない国にすることはできる」

 これはあるNHKBSのドキュメンタリー番組で、インタビューに答えた無名の黒人女性の言葉である。

 彼女は敬虔なキリスト教徒で、毎週日曜日には必ず教会に行っていた。その教会に集う人々の大半が白人だった。それでも彼女は人種差別などの不快感を感じたことはなかった。

 半年前に牧師が宗教の話ではなく、政治の話を始めた。大統領選挙戦がたけなわのときであり、牧師はトランプを讃え、彼の支持を訴えた。そのうちに周囲の視線が黒人の彼女に集まりだした。いたたまれない気持ちになって、それ以来敬虔な信者だった彼女はその教会に行くことが出来なくなった。

 トランプが取り戻したい偉大なるアメリカとは、黒人が差別され、同じ食堂で食事することも出来ず、バスの席も分けられていた時代のアメリカだ、と語る初老の黒人がいた。偉大なアメリカ、と云う言葉にその時代がよみがえってくると言う。そのことは黒人もそうだけれど、白人たちにもぴんときているはずだ、と云うのだ。

 そのときに忽然と分かったことがある。アメリカは人種差別は間違っている、と理念で理解した。白人たちはリンカーン以来長年かかってようやくそれを受け入れた。それはネイティブアメリカ人であるいわゆるインディアンへの虐待と同様にアメリカ人のトラウマとなった。

 そのトラウマこそがオバマ大統領の誕生の隠れた原動力だったのではないか。それは口にはしないけれど誰でも内心で感じていたことかもしれない。特にアメリカ人は。しかしオバマ大統領に8年間国を預けていたことに、もう良いではないか、と云う思いが高まったのだろう。

 アメリカは女性蔑視の国であると私は思う。それはアメリカ映画で繰り返し表現されている無知で愚かですぐ気絶したり騒ぎ立てる女性の姿に現れている。おんなは馬鹿である、と云う意識がアメリカの白人に根深く存在する。だからこそウーマンリブなのである。

 黒人大統領の次にその女性蔑視の代償として女性大統領を選ぶ、という選択肢があるとヒラリー・クリントンは期待したかもしれない。しかし黒人差別のやましさの裏返しとしてのオバマ大統領にうんざりしたアメリカの白人たちは、女性蔑視の裏返しとしてのヒラリー・クリントンを選ばなかった。もう本音で行こう、と云う白人の男たちの気持ちを掴んだのがトランプという男である。

 女性蔑視とも取れるトランプの過去の言動が、彼の支持にほとんど影響を与えなかったことを意外に思ったけれど、それが実はアメリカなのだと言うことをどれほどの人が気がついただろうか。だからそれらを暴露されたことは、ある意味でトランプにとって有利に働いたかもしれない。

 インタビューを受けた黒人たちが、これから人種差別が再び始まるという懸念を語っていたのは杞憂ではないと確信した。これから再び長い闇がアメリカに訪れる。日本人も白人ではない。トランプにとって日本人も種として格下なのである。その日本の自動車がアメリカよりも売れるのは許されることではないと彼が言うのは、彼にとってもアメリカの白人たちにとっても正しいことなのであろう。

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コメント

ヘイト・差別を批判する人たちは、差別される側に日本人がいることに気づいてるのでしょか?

けんこう館様
むかし南アフリカがアパルトヘイトをしていたときに、日本人は有色人種なのに白人待遇だと自慢している人たちがいましたね。

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