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2017年1月18日 (水)

養老孟司「骸骨考 イタリア・ポルトガル・フランスを歩く」(新潮社)

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 養老孟司は解りにくい。解りやすいと思って読んでいる人がいたら、よくよく読み直して欲しい。長い時間を掛けて深く思索したことを元に世界を解釈しているのだけれど、その根底をよくよく解った上でないとその論理展開についていくのが難しい。

 言葉がとても平易なので、解ったような気にさせられてしまうということもある。しかししばしば常識とは違うことを言っているので、あれっと思うと迷路に踏み込んでしまう。そこをとことん理解しようとすると実はとても解りにくいのであり、そのかわりそれがどういうことかを得心したときの感激はとても大きい。 

 この本にはヨーロッパの人々の思考と日本人の思考についての深い比較考察がされている。膨大な思索が短い文章に込められていて、過去の著者の文章を多少理解していないと、ただ骸骨のある納骨堂や教会を見に行った紀行文としか読めないだろう。

 しかしおびただしい骸骨が人の眼に触れる形で納められている納骨堂というのは日本人には想像を絶する光景だろう。それに圧倒されて思考停止にならず、そこにその骸骨たちが納められ陳列されていることの意味を読み取ることが出来るのは、養老孟司が優れた思索家であるからだろう。

 この本の冒頭には数十葉のカラー写真が納められていて、それぞれの写真のナンバーをもとに参照しながら文章を読んでいくようになっている。ここで繰り返し写真を見ることになる。最初にただ眺めていただけの写真が次第に意味をもってこちらに迫ってくる。

 この本は「身体巡礼 ドイツ・オーストリア・チェコ編」の続編となっており、前作は今回新潮文庫に納められた。探して読むことにしよう。

 ザル頭なりに、生と死についていささか考えさせてもらった。

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。
先日は私の拙い読書論を見ていただきありがとうございます。
確かに養老先生の本は妙に理屈っぽくて読みにくい部分があります。
しかし彼ほどの思索家はそういないと思います。
余談ですが私の大学院時代の指導教官が何かの会合で養老先生と話をしたそうですが、
「結構理屈っぽい人だったよ」と申していました。
私としては養老先生のその理屈っぽさが好きなのですが・・・。
では、
shinzei拝

Shinzei様
私も少々理屈っぽいと言われることがありますので、養老孟司の本が肌に合うのかもしれません。
論理展開が早いので、しっかり読まないとわけが分からなくなることも多いです。
もういちど読み直して初めて理路が明らかになることも多く、自分が浅読みしていたことに気づかされたりします。

同じ感想を持った人がここにもいるようですね(笑)

私も、 「一見読みやすいが時々難解で読み直すことしばしば」 という印象を持っています。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/142/trackback

それと、「読んでいくと本当か?! と思うようなことが書かれている」 ということも。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/4502/trackback

Hiroshi様
内田樹氏と意気投合することが多いようです。
身体という自然と脳という装置を通して考える観念との関係を考え続けている養老孟司氏と、武道という道を通して身体を考えている内田樹氏とはわかり合えるものがあると云うことでしょう。
私も多少は格技をしたことがあるので、その辺はちょっとだけわかる気がしています。

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