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2017年2月 3日 (金)

マスメディアの劣化

 極論だけれど、トランプ大統領を生み出した原因の一つがマスメディアの劣化ではないかと思う。トランプは弱点を見せた者をとことん叩く。いま、アメリカ国民の多くがトランプがマスメディアを叩くと拍手喝采する。マスメディアの欺瞞性に気付いた大衆はマスメディアの言うことをもう信じない。トランプの問題点をマスメディアが報じると、また嘘を言っていると思う。トランプの作戦勝ちである。いまアメリカはマスメディアを信じない者と、まだ信じる者に分断され、信じない者がどんどん増えているのではないか。

 大統領就任式のときに集まった参集の数が過去の大統領と比べて歴然と違うことが写真で明らかなのに、トランプは昂然と「嘘のニュースだ」と言ってのけた。トランプは「自分の言うことが事実であってそれ以外の事実はない」とうそぶいている。

 マスメディアは大衆に信頼されなければ力を失う。それはトランプの作戦が奏功したからなのか。そもそもマスメディアが長年に亘って信頼を損なってきた結果ではないのか。マスメディアが信頼できないと大衆が感じ始めているとき、トランプはその欺瞞性を誇張しただけである。だからマスメディアがトランプの欠点を暴けば暴くほどトランプの支持が増える。

 トランプはバノンと云う大衆操作の天才をブレインにしている。バノンはこのメカニズムを熟知している。バノンのような、自分が大衆を操作することに快感を感じる人間がトランプを操っている。バノンは正義だの国家の大義だの知ったことではない。自分が参謀としてカリスマ(トランプがカリスマであるかどうかちょっと疑問だが、形の上ではそう見える)を立て、それを利用して世間が右往左往するのが面白くてたまらないのだ。彼には善悪などという価値観はないだろう。

 そんなことはマスメディアに携わる人たちには明確に見えている。それなのに手も足も出ないのはなぜなのか。話が元に戻るが、大衆の信頼を失ったからだ。

 報道に携わる者には正義があった。それが自分勝手なものであるにしても正義を信じていた。いま彼等に正義があるのか。私はひとりよがりの正義を毛嫌いする者であるけれど、正義そのものを否定するわけではない。当たり前だ。善悪が混沌としてしまえばこの世は闇だからだ。そんな世界は生きにくい。

 その正義をマスメディアは経済論理の中に矮小化して押し込めてしまったのではないか。マスメディアはスポンサーを必要とする。情報を収集するためにはコストがかかる。そのコストを情報の受け手である大衆が支払うのであればまだ問題は少ない。正義が損なわれにくいからだ。しかしテレビやラジオはほぼ無料である。スポンサーがなければなり立たない仕組みだ。新聞も販売だけでは成り立たない。それは紙面の半分以上に氾濫する広告を見れば分かる。

 スポンサーが必要であれば、マスメディアはスポンサーに迎合する。スポンサーに都合の悪いこと、不快に思われることは報道を控える。あえて報道して苦情が出ても昔は気骨のある者もいて撥ねのけたという伝説があるが、昔からめったにあることではなかっただろう。そういうところはスポンサーが離れ、淘汰されたに違いない。大衆はそのような気骨に拍手喝采するけれど助けない。

 そのスポンサーたちがクリントン陣営の背後にいることをトランプ陣営は繰り返し指摘したのだ。トランプが金持ちたちを非難したのはそのようなスポンサーたちのことである。それなのにどうして金持ちであるトランプが支持されるのか。ターゲットは金持ちであり、大衆をマスメディアを通じて操作している者たちであると言い、かれらを敵だ、と指さしたのだ。そして自分は大衆の味方だと繰り返した。移民をアメリカに入れない、テロをなくす、貿易不均衡を正す、雇用を増やす、と約束した。

 この熱狂をヒットラーになぞらえる向きもある。ある面で似ていないことはない。しかしまだ始まったばかりで、これからどうなるのかトランプが異質すぎて見当もつかない。じっとしていられなくて立ち上がっても、どうしようもないからまた坐るだけである。これではディオゲネスみたいだ(ギリシャの哲人:戦争が始まる、と云って人々が右往左往するのを見て、自分が住処にしていた大きな木の樽をあちらにゴロゴロこちらにゴロゴロ転がして見せた)。

 マスメディアの劣化とは、ビジネスマインドに報道が呑み込まれてしまった結果であると考える。スポンサーに、そしてスポンサーの背景にマスメディアが組み込まれ、その論理に従い、経済原則に従って報道をするようになった。それに馴れ、その世界観を元にすべてを解釈し、あろうことか大衆を教導しようとした。それは欺瞞の、嘘の世界であるとトランプは暴いたのだ。すでにうさんくささを感じていた大衆はその言葉に目覚めた(と思った)。

 これがトランプ大統領を生み出したメカニズムではないだろうか。氾濫するテレビCMにうんざりし、内容の希薄化にうんざりしている大衆は、アメリカだけではなくて日本にもいることを日本のマスメディアは気がついているのだろうか。

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コメント

OKCHANさん
CMは、
葬儀屋さん。
キャッシングして出来た借金過払い請求。
生命保険、死んだら保険金いくら?
車の保険。

うんざりです
高齢者が必要としている物ばかり
テレビの前で文句言っています

ちかよ様
それにパチンコ屋のCM、健康食品やサプリメントのCM。
経済活動の不健全さを感じますね。
テレビもスポンサーが離れてしまい、いままで相手にしていなかった会社からスポンサーを集めなければなくなったと言うことなのでしょうね。

劣化だと言われるのは、おそらくOKCHANさんがこれまでマスコミに「(無意識に)高い期待」を持たれていたことの裏返しで、実際にはマスコミも情報源の1つという立場に立てば、また違った解釈もあるのではないかと思います。

そのマスコミも現在ではSNSやblogの出現で、これまで独占的かつ最も得意としたupload力も脅かされている状態です。 マスコミ自体が今や過渡期にあるのではないでしょうか?

私が注目する人口歴史学者、E. Todd氏は、『原理主義とは何か』 の中で

『大衆識字化と受胎調節はともに、テレビのニュースで伝えられる世界の動きとは異なって、実に心強い世界の歴史の姿を描き出してくれる』 と述べられています。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/33/trackback

そうした質的量的に異なった情報源をいかにベストミックスで自分に取り入れていくか? これがこれからの情報化社会に生きる我々の課題であると考えています。

Hiroshi様
ちょうどエマニュエル・トッド氏と佐藤優氏の「トランプは世界をどう変えるか?」という本を読んだところです。
E・トッド氏のものの見方は面白いですね。
確かにマスメディア以外の情報源も含めて、複数の情報を得ることは必要だと思います。
ただ、専門家ではありませんから、とりあえず手に入るものだけで考えています。
インターネットのニュースを見ても、それがほとんどマスメディアの報道したものの焼き直しであることが明らかですから、ほとんどマスメディアの構成する世界観の中に取り込まれているのかもしれません。
それでもそれを鵜呑みにすることなく、その裏側を読むことは多少出来るのではないかと思っています。
疑うこと、矛盾している点について考えること、その程度で満足しています。

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