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2017年4月23日 (日)

学生の幸福感

 OECDが72カ国で学生の幸福感についてアンケート調査をした。その結果によると、比較可能な47カ国のうち、日本の学生の生活満足度は平均以下で、下から6番目という低いものだった、と中国メディアが伝えていた。

 日本でも報じられたのだろうか寡聞にして知らない。しかしなぜ中国がわざわざ日本の学生の幸福感について伝えるのだろうか。中国の学生達が中国の現状に不満を持ち、日本をうらやましがる傾向があるのかもしれない。日本の学生は思うほど幸せではないのだよ、と云って慰めるつもりなのだろうか。

 ちなみに満足度の高かったのは、1位がドミニカ共和国、2位がメキシコ、コスタリカが3位だった。逆に下位は、最下位がトルコ、次いで韓国、そして香港であり、ワースト10位のうちに東アジアが6カ国あったという。

 幸福と思うかどうかを測る絶対的な物差しなど存在しない。幸福感は相対的なもので、本人が幸福と思うか不満と思うだけのことだ。だからそもそも比較することに意味があると思えない。豊かさが幸福感と相関しそうに思えるが、他国から見て豊かでも、本人がそれが豊かだと思わなければ幸福だと云わないだろう。

 上位の国々は日本から見れば必ずしも豊かな国と思えない。東アジアの人々は向上心が高く、より高みを目指す傾向がある。それだけ勤勉でもある。自分が現状に満足していないから、より良くなろうと努力する。それに政治的に熱い国は、学生は特に不満を持ちやすいだろう。格差の大きいところもそうだ。

 こうして日本のことに言及した中国が、どの辺の順位にあるのか、記事は伝えていない。中国ではアンケート結果がしばしば実情を反映しないから、そもそも調査が行われなかったのだろうか。それにしてもこういうアンケート調査をすることにどんな意味があるのか考えてしまう。相対的なものを計数化することにはあまり科学的な意味がない。解釈がさまざまになり、ときに正反対の解釈も可能になるからだ。

 ところで日本の学生の幸福感が低いなどという結果から、またぞろ社会が悪いからだ、格差社会だからだ、などと政権批判の材料にする向きも出てきそうな気がする。彼等はなにより勝手な解釈をするのが得意だから。なに、日本の学生は実は生活に満ち足りすぎていて、幸福を感じることができないだけだと云う解釈も成り立つのである。なにかが足らないとき、それを苦労して獲得すると幸福感を得ることができるけれど、なにしろ平和だからなあ。

 東アジアや東南アジアへの旅行から帰って日本の若者の顔を見ると、その覇気のなさ、のほほんと平和な顔に、日本は大丈夫かと心配になる。危機に対してのセンサーが退化しているように見えるからだ。

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コメント

アメリカでは娘はESOLクラスに居まいます。
クラスメイトにはいろいろな国から来た子がいて、学校のランチをもらって帰る子や$15の遠足代の捻出も難しい家庭もいます。でもなぜかその子たちは明るくて優しいらしいです。
そのことに遭遇し娘なりに色々と考えているようです。
日本での学校はカトリックでした。そこでシスターがよく日本では衣食住が整っていて苦労という体験が少ないです。
唯一の努力が勉強だと思いますと仰っていました。

向上心があるのは良いことですが、なんでもかんでも足りないことを嘆きがちだと思います。
幸せを感じない、という人は結構は満たされていることに気づかず甘えた考えなのかな、と思ってしまいます。

おはようございます
先日は私のブログを見ていただきありがとうございます。
そもそも幸福度などという”主観的な”ものを測ること自体間違いだと思います。
人間100人集まれば100通りの考えがあるのですから・・・。
日本の新聞社が行った「若者の幸福度」というアンケートでは「幸せだ」と答えた人が過去最高だったのを考えれば、こういった指標がいかに曖昧かがわかります。
では、
shinzei拝

藤子様
先日「欲望の資本主義」というNHKのドキュメントを見ました。
欲望の資本主義には際限がなく、人はそれに振り回されています。
新しい価値観を見出さないと、生きるのが困難になりつつあるのかもしれません。
日本の若者は少しそれに気がつきだしていると見ることもできます。
マスコミは逆にそれに気がつかずに(気がつかないふりをして)欲望をあおり続けている気もします。
相対的に貧しい学生をことさら取り上げて報じ、被害者だと言いたげです。
生きていければ多少損をしてもいいや、と云う生き方もあると思うのですが。

shinzei様
西洋文化中心主義が批判されて久しいですが、このようなアンケート調査の指標を見るといまだにそこから抜け出せていないのだと感じます。
調査をした人たちはまったく意図せずにそれを採用して、意外な結果に驚いているようですが、自分の指標に疑いを持つことができないのでしょう。
それをとりあげてなにか言いたげな中国のマスコミはその意味が理解できていません。
だからなにを言いたいのかわからない取り上げ方になっていました。

長男は、京都で下宿生活をしてます。わりと真面目に授業も出ているようです。サークル活動も楽しそうです。バイトばかりで学校にもあまりいってなかった私とはだいぶ違います。
私と同じ学部なので授業選択の相談相手にはなるようで時々話します。
でも、中国・韓国に日本のことを言って欲しくありません。

けんこう館様
日本の悪口が言いたくて仕方がないのでしょう。
それだけ日本のことが気になっていると云うことです。
こちらも同様ですが。

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