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2017年4月29日 (土)

処分ではなく廃棄?

 このニュースについては他にも書く人があるかもしれないが、備忘のために書き記す。

 京都大学教授でフランス文学者の桑原武夫氏(昭和63年物故)の蔵書一万冊あまりが、寄贈先の京都市によって廃棄されていたことが明らかになった。経緯についてはいろいろとニュースで報じられているけれど、気になるのは「廃棄」されたと報じられていることである。処分なら古本屋などへ払い下げられた可能性があるが、廃棄とは文字通り捨てられたと覚しい。つまり散佚して誰かの手に渡った可能性がなく、この世から消滅したと云うことであろう。

 本好きの人が死んだ後に蔵書の処分に困って地元の図書館などに寄贈を申し出ることが多い。ところが図書館も収納場所が満杯のところが多く、ありがた迷惑であると聞く。図書館は収蔵図書の利用率を気にする。図書館でベストセラーを借りる人が多いからどうしてもそのような本を棚に並べることになる。

 入手困難だったり高価な本を揃えることも大事な図書館の役割だが、そのような本は利用率が高くない。今回桑原武夫氏の本が廃棄されたのはその利用率が低かった故であるという。桑原武夫氏は存在が知られない貴重なものも多数集めていたようだ。となればその目録を明らかにして公知に務めれば利用率も上がったかも知れない。

 驚くべきことは桑原武夫氏がどんな人か知らない人が廃棄した図書館の責任者(右京中央図書館の女性副館長)であったことだ。もし知っていれば廃棄を躊躇して遺族に問い合わせくらいはするだろうし、もし承知しながら廃棄したならずいぶんなことだ。遺族は連絡を受ければ引き取り先のあてはあったのに、と言っているという。

 目録は作成したらしい。目録があるから廃棄していいと判断したという。本好きの人間には信じられないものの考え方だ。たぶん電子書籍ファンなのだろう。本好きにとって本は現物なのである。日ごろ膨大な本の山にうんざりしていたと思われる。そういうひとを図書館の責任者にしては本が可哀想だ。

 私は桑原武夫氏について詳しくは知らない。ただ、彼が交遊した人たちが彼を敬すること山の如しであり、梅原猛や梅棹忠夫、上山春平、鶴見俊輔を世に出したという功績は大きい。

 功績に加えて、何より私が尊敬する史学者の桑原隲蔵(くわばらじつぞう)氏のご子息であるという事実もあり、いささかの本好きのひとりとして、今回の事件には心が痛んだのである。

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