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2017年4月 2日 (日)

池上彰「世界から格差がなくならない本当の理由」(SB新書)

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 世界の人々の格差はますます広がるばかりだ、と言われている。昔のように皇帝や王様などの強大な権力者が、強権を背景にして富を集めるのなら分かるが、今の大富豪はそれと匹敵するかそれ以上の富を強権など用いずに集めている。しかもその富は一度貯まるとひたすら増えているらしく思われる。

 どうしてこんなことが起こるのだろうか。その理由を池上彰が分かりやすく説明しましょう、というのがこの本である。確かに分かりやすくて読みやすい。だからあっという間に読み終わってしまった。

 ではこの本を読んで、誰かに「世の中はこういう仕組みで格差が拡大しているのだよ」とうまく説明できるようになったかと言われると心許ない。それは私が雑に読んだからなのだろうが、私がこの本で「なるほどそうか」と得心がいかなかったからである。

 確かに経済的なメカニズムについてはこの本に書いてある通りなのであろう。グローバリズムというものがこういう富の偏在を生み出していることもよく分かる。しかしそれを生み出している人間の心性にこそ私は興味があり、そこにもう少し踏み込んだところがあっても好いような気がする。物足らないのである。格差の拡大が問題であると認識する者なら、この格差の拡大がこれからも続くのか、どこかで破綻を迎えるのか、その転換点はどのようなことで生ずるのか、それを皆が認めてきたのはなぜなのか。

 この本に書かれていることはいろいろなかたちですでに論じられてきたことだ。それを分かりやすくまとめたという点がこの本の手柄だろう。その先の予測については自分で考えさせてくれるというのもこの本の手柄か。池上彰はそういえばご託宣を述べる人ではなかった。

 グローバリズムは自由競争の社会が正しいという前提である。ところがその社会は強者が正しいと言う社会でもある。つまり弱者は正しくない、自己責任で弱者になったと決めつける社会である。そこにはやさしさが見られない。世界が弱肉強食を正義とするとこのように格差が拡大する。その側面から格差社会の問題を見つめないと、自分の問題として考えることが出来ない。社会が悪いから、と言っていては何も答えは得られないだろう。

 弱者は敗者であり、自己責任でそうなったという思考法に自分もとことん洗脳されている。そこからどう抜け出せるか。それがグローバリズムについての見方を補整させてくれるのではないか。TPPについても、あらためて考え直す必要があるのかもしれない。

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