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2017年5月 7日 (日)

酒の飲み方

 酒の飲み方、などといっても酒はこう飲むとよろしいというような講釈を語るつもりはない。自分のお粗末な飲み方を語ってそれを反面教師の材料にでもしてもらえば良いし、笑ってもらうだけでもかまわない。

 歳を取っても酒の飲み方があまり変わらず、酒を覚えてからずっと酩酊することが主目的である。

 本格的に酒を体になじませたのは大学の寮生活からだったから、酒を飲むということはそのまま痛飲することだった。体の限度を超えるほど飲み、どれほど意識を失わずにいられるか毎回試して、その限度を引き上げる訓練を続けていたような飲み方だった。酩酊しながらどれほど酒の失敗をせずにいられるか、100%自己を見失わず、酩酊しながらせめて10%程度は覚醒しているようにする訓練だ。そんなもの、傍から見れば100%自己が失われて見えていただろう。

 父の家系は下戸である。父方の親類で酒を飲む人はひとりもいない。母は飲まないが、母方は酒が強い。祖父も叔父達も強い。酒の強い人はたいていあまりものを食べずに飲む。父は健啖家でたくさん食べる。私は父の家系で薄まった中途半端な酒飲みだから、たくさん食べながら酒を飲む。

 しかしそれだとどうしても飲み過ぎの上に食べ過ぎになる。そうして長年の鯨飲馬食がたたり、体は肥満し、糖尿病や痛風が持病になり、睡眠時無呼吸症候群となった。

 在職中も医師にかかっていたけれど、もとを絞らずに結果を求めても無理というもので、頭では分かっているつもりだったが習慣となったものはなかなか変えることはできないものだ。

 酒を美味しく飲む方法をある人から教わった。美味しそうに飲むのである。人から見て美味しそうに見えるように飲むと、実際に美味しいから不思議だ。これはたぶん食べ物も同じだろう。ものを飲み食いするときにいかにもまずそうにしている人がいる。その人は何を出されてもまずいに違いない。人間はまず形から入るというのが真実であることを教わった。いまはそれがようやく身についた。だから相手もそれに感応して美味しそうに飲み食いしてくれる。もちろん私より遙かに飲み上手がいて、そういう人と飲むと至福である。

 いまは独り暮らしだから相手がいない酒が多いが、リタイアする前は酒を飲むときはほとんど相手がいた。友人先輩後輩が相手なら気をあまり遣わず、互いに酌み交わすから最高だ。飲み屋の親父や女将でもかまわない。話し相手になってくれなくてもその様子を見ながらその人の生活や性格、人生を勝手に想像できて、しかも相手がこちらに意識を多少は向けてくれているそぶりがあればそれでいい。

 飲み屋の善し悪しは、こちらを気にかけている人がいるかどうかで決まる気がする。声をかけても手を上げてもそれに気がつかない従業員ばかりいる店などは、いくらはやっていてもなんとなく行く気がしなくなるものだ。気配りのない者はサービス業をすべきではない。

 酩酊するために飲んでいた酒の飲み方のままで晩酌していると、ピッチが速すぎて飲み過ぎる。しかも美味しそうに飲む飲み方もつい忘れてしまう。晩酌の量を自分で制限し、つまみの量も少なめにした。ただ減らすのはなんとなく物寂しい。そこで少し高いけれど、美味しい酒、美味しいつまみをときどき用意する。量を質に変えたのだ。鯨飲馬食を体も受け付けなくなっているからそれでちょうど良い。お陰で体重も減り、医師からはよく努力していると評価されるほど血糖値も下がった。

 美味しいお酒が美味しいと云うことをこのごろしみじみと感じるようになった。旅に出たら宿で地酒の美味しいのを出してもらい少しだけ飲む。気にいれば地元の酒屋でそれを土産に買い、帰って旅を思い出しながらその酒を楽しむ。

 息子の友人が日本酒にはまり、ついに杜氏になったと云う。だから息子は普通の人よりもはるかに日本酒に詳しく、善い酒を知っている。いまは息子に美味い酒を教えてもらうようになった。

 酒は飲み過ぎれば酒毒というように体を損なう。すでにかなりダメージを受けてしまったけれど、酒を覚えて飲み続けたことをまったく後悔していない。酒を美味しく飲めたことで知り合った多くの人たちがいる。酒が介在しなかったらどんなに自分の人生は彩りのないものだったかと思う。酒はやはり相手だし、そこに美味い酒があれば至福である。

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コメント

OKCHANさん
美味しいを飲むために、老化現象で困ったことはありませんか?
トイレに行く際、
足が立たない。
歩けない。
そんな時のために、チェリッシュCM紙パンツの準備はいかがですか?
怒られちゃうかな
介護の練習は、まだ早い。

ちかよ様
まだそこまでのことはありませんが、つまずきやすくなっているのは実感しています。
また、これは男の宿命なのでしょうが、小便の切れが悪くなってパンツが汚れやすいのが不快です。
あのCMはとても気になります(いまに必要になりそうな気がするので)。
こまめに下着を替えていますがひどくなったら前立腺を検査してもらうつもりです(以前検査して人並み程度で問題なしでした)。
それよりビールを飲んでもすぐトイレに行きたくなりません。
普通の老人とは違います。
そのかわり朝は利尿性のある高血圧の薬を飲むので忙しくなります。

おはようございます。
情けない話ですが私もお酒やお茶を飲みすぎるとおしっこが”ジョロっ”と出てしまいます。
まだ40にもならないのに、です・・・。
以外に私は老化が早く、それだけ長生きできないのでしょうか?
現に私の父やおじたちは判で押したように短命でしたし・・・。
では、
shinzei拝

shinzei様
私はCMで私だけの悩みではないことを知り、ちょっとほっとしているところです。
人間はやはり生き物で、だんだんしまりのないところも出てくるものなのですねえ。
それも含めての自分ですから仕方ありませんが。

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