好きなドラマがつぎつぎに終わる。あまり続くと飽きてしまうからそれで好いのだが、「リゾーリ&アイルズ」シリーズのように第7シーズンになっても続いて欲しいと思うドラマもある。これも今回始まったばかりのこのシーズンで終了である。
「ナイトメア 血塗られた秘密」と云うゴシックホラーのシリーズが第三シーズンを最終章として終了した。録画して録りためていたその第三シーズン全9話を一気に見た。
ナイトメアとは悪夢のことである。もともとは悪霊である夢魔が睡眠中の人の上に乗って息苦しくさせて悪夢を見させることを言うのだそうだ。
物語の舞台が世紀末の霧のロンドンなので、てっきりイギリスのドラマだと思っていたが、アメリカのドラマなのである。ただし、制作はロンドンやダブリンで行われているからテイストはイギリスのゴシックホラーそのものである。
見た人は分かっているからくだくだしい説明は不要だし、こういうのに興味のない人、嫌いな人にとってはもっと不要だろう。それでもこのドラマのことが書きたくなるのは、この拙い説明でも「ああ、観れば良かった」と思う人がいるはずだからである。
なまじな映画でも見られないようなセックスシーンがある。テレビでこんなの放映して良いのだろうかという気もするが、良いのである。主演のエヴァ・グリーンは役柄が乗り移ったような鬼気迫る熱演で、とても強い精神力ととても脆い部分を併せ持つ不思議なキャラクターを完璧に演じている。彼女なしではこのドラマはあり得ない。
第一シーズンでは悪魔と闘い、第二シーズンでは魔女を倒すのだが、第3シーズンの今回の敵はドラキュラである。そのドラキュラが、実はルシファーと共に天国から追放された堕天使であるとされている。つまり悪魔のひとりであり、この世を暗黒の世界にするためにヴァネッサ・アイヴス(エヴァ・グリーン)の愛を必要としているのだ。ヴァネッサが愛するイーサン(ジョシュ・ハートネット)に去られ、家族と思っていたマルコム卿も去り、一人ぼっちになってうちひしがれたヴァネッサはその心の弱みにつけ込まれていく。
魔女や吸血鬼、狼男にフランケンシュタイン博士、さらにそのクリーチャー(普通はこちらがフランケンシュタインと誤解される)、あの永遠の生命を持つドリアン・グレイ(『ドリアン・グレイの肖像』の主人公)まで登場するのだ。今回は端役でジキル博士まで登場した。
今までのシーズンはほぼロンドンが舞台だったが、今回のシーズンではイーサンの故郷であるアメリカの砂漠地帯のシーンが多い。イーサンの凄まじい秘密が全て解き明かされる。これこそが彼がヴァネッサの元を去った理由なのである。
アフリカへ探検に出かけていたマルコム卿の危機を不思議な男が救う。彼はアパッチ族の最後の生き残りであり、イーサンとは深い関わりを持つ男で、マルコム卿をイーサンのもとへ導く。
拡散していた仲間たちがついにヴァネッサのもとへ集まったとき、すでにロンドンは暗黒の世界となりつつあり、疫病は蔓延し、夜の獣たちが人をつぎつぎに血祭りに上げていた。
ヴァネッサは救われるのか・・・。
エヴァ・グリーンはいろいろな映画に出演しているが、特に印象的なのは『007カジノロワイヤル』でジェームズ・ボンドの奮闘空しく、ヴェネチアの水底に沈んでいくあの美女だといえば分かるであろう。あの神秘的な大きな瞳はインドか中近東の美女を思わせるが、フランス人である。
忘れられない大好きな映画に『ラスト・オブ・モヒカン』がある。少年の頃、原作(抄訳)を読んでいて、それを映像化したこの映画になつかしさと震えるような感動を覚えた覚えがある。あのときの主演のダニエル・デイ=ルイスと彼を宿敵として付け狙うインディアンを演じたラッセル・ミーンズが強烈に印象に残っている。
そのダニエル・デイ=ルイスとマルコム卿を演じたティモシー・ダルトンがどことなく似ている気がしている。しかもアパッチ族の生き残りで重要な役回りをする役者(俳優名が分からない)がラーせる・ミーンズにそっくりなのである。
ドラマとは関係ないけれどストーリー的なキャラクターとしては無関係でもないような気がしている。アメリカで西部開拓という名のどれほどひどい殺戮が行われたのか、それを知っているからである。そういえば先日アパッチ族の最後に関する古い映画を二作ほど観たばかりだ。
なんだか話がとりとめもなくなったが、世紀末(もちろん19世紀末)という時代が、やがて20世紀という科学の時代への幕開けにつながり、闇がこの世から失われていくことをこのドラマは伝えている。そのことは悪いことではないと思いたいけれど、人の心の闇は却って深まったのかも知れない。
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