あなめあなめ
天明の大飢饉のときにみちのくでは餓死者が大量に生じた。『菅江真澄遊覧記1』でその餓死者たちの白骨の山を見た菅江真澄が思わず「あなめあなめ」とつぶやいたことを引用した。その「あなめあなめ」の意味をあとで説明する、と書きながら後回しにしていたのでここに書いておく。「ブログ記事8/15付け・飢饉の餓死者(『菅江真澄遊覧記』より)」
在原業平がみちのくを旅したとき、夜更けに女の声が聞こえてきたので野原にさまよい出ると、そこには髑髏が転がっており、「秋風の吹くにつけてもあなめあなめ」と髑髏が歌っていた。
「あなめ」とは、「ああ眼が痛い」という意味である。髑髏の眼窩には薄(すすき)が生えており、それが秋風が吹くと揺れて眼窩をこするのが痛い、と嘆いていたわけである。
この髑髏が小野小町のものであることを知り、在原業平が薄を抜いてやると声は止んだという。
小野小町には美女であるが故の美女変相の話がある。絵物語になっている。絶世の美女である小町、やがて歳とともに容色が衰えていき、老婆となり、死に、死体は腐爛し、朽ち果て、最後は白骨となる。人の世の無常を表す絵物語である。
それと在原業平の伝説が組み合わさってこのような「あなめあなめ」の話になったのであろう。業平は髑髏の歌う「秋風の吹くにつけてもあなめあなめ」に対して「小野とは言はじ薄生いたり」と返している。
その意味は薄が生えているくらいだから小野(小さい野原)とはいえない、ということだが、もちろん小野小町を掛けているわけである。
菅江真澄は白骨を見、この歌を思い出してつい「あなめあなめ」とつぶやいたわけである。


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