人生のやり直し
人生が二度あれば・・・というフレーズの入った井上陽水の歌がある。
人生をやり直すことができたなら、というのは古来からの人間の願望らしい。確かにあのときにこうしていれば、と思い出すことは数多い。悔いばかり残る人生を送ってきたのは私だけではないだろう。
でも私は人生をもう一度やり直したいと思わない。人生はやり直しがきかないから輝いているのだ、などと聞いた風なことを言うつもりはない。あんまり輝いていなかったことは自分が一番よく知っている。
けっこう運良く過ごしてきたと思う。これからなにがあるか分からないけれど、多分それほどひどいことにならない気がしている。ときどき、どうなってしまうのかと背中に冷や汗の流れることや、あとはどうなってもいいから逃げ出してしまいたいことがあった。それに正面から立ち向かったのではなく、いつの間にか何とかなっていた。思い返すと、二度とあんな思いはしたくないというのが本音だ。
意気地なしで怠け者の自分が、よくもまあ生きのびたものだと胸をなで下ろすことが多いのである。いまこんなに脳天気でいられるのは、運が良かったからだとしか思えないのであり、もう一度人生をやり直したら、多分いまより悪い結果になりそうな気がする。
もちろんやり直したいことがないわけではない。しかしそれをやり直したら、それ以上に災厄が降りかかる気がしているのである。人生をやり直すなんてごめんだ。
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