モラルの喪失
世界的にモラルの低下が起きているように感じるのは私だけではないだろう。それがむかしからあることで、とりたてていま増えているのではないという反論もあるに違いない。何しろそんな統計を正確に取ることは不可能だからだ。
それなのにそう感じるのはそういう報道が増えているからかもしれない。最近はややこしくて、正義感からの告発のためのものではなくて、自分が腐敗しているのに相手を腐敗していると先手を打って叩き落とすこともあり、さらに自分の論を強調するためにさほどでもないものを針小棒大に騒ぎ立てているだけというものあるので、どれがどれほど深刻なのかがわかりにくくなっている。分かっているのは、ちょっと油断するといつ足元をすくわれるか分からないらしいことだけだ。
腐敗や搾取が成り立つのは、数多くの搾取される側の人々がいるからだ。腐敗した人ばかり、搾取する人ばかりになったら腐敗も搾取も成立しない。
中国の共産党員達をはじめとする腐敗の話が山のように語られている。すべてが事実かどうかは知らないがすべてがためにする嘘だなどということはないだろう。そういう話を面白おかしく書いてある本を読み、だから中国の将来は危うい、いまに崩壊する、などという話になると、にわかには信じ難いけれど、こちらにはいささか日ごろの日本に対する居丈高な中国政府の態度に不快を感じているところだから、そうだといいなという願望もあったりしておもしろく読めてしまう。
それを勘違いして、中国人全体がすべて拝金主義で腐敗していて・・・などと思う人もいるらしいが、それではそもそも国が成り立たないだろう。ただ、そういうのが横行していれば心ならずも多少はそれに合わせて生きのびなければならず、それが次第に普通になってモラルの低下に繋がることはあるかもしれない。
中国人は・・・などと一括りにしてうっかり言ってしまうが、たいていそのときには対象は限定されている。それが見えない人が勘違いする。調査によれば、日本に親和性を感じない、つまり嫌いな中国人は多いがそれでも約半数で、実は日本人の中国嫌いの人の方が8割以上とはるかに多い。伝えられる中国人の問題点のニュースから、中国人はそもそも、と思い込んでいる日本人が多いということである。逆に中国人はそもそも政府や報道をそのまま信じたりしないから、もう少し冷静なのだろう。
世界が経済で動いているのはたしかな事だが、いまは実体経済と世界を動かしている経済は違うものだなどといわれると、何のことやらよく分からない。どうも金で金を回すのがいまの経済らしい。だから実体経済の何倍もの金が動いていることになっているのだそうだ。そもそも金は幻想だ、と言う決めつけがあるくらいだから、暴走してバーチャルの妄想的な世界になっているのかもしれない、などと私は思う。その妄想に狂奔して上手く乗れると巨額の富がつかめるらしい。それなら拝金主義がはびこるのも当然かと思う。そうしてその結果、格差が信じられないほど拡がっている。
とはいっても実体経済しか理解できない、私のような人間も数多くいるだろう。そういう大多数の人がいるからこそ格差の頂点にいる人は巨万の富を手にすることが出来ているのだ。バーチャルで得た富で豊かになった人間はバーチャルで浮き沈みし、風の吹きようで失落するだろう。そういう人をうらやむことよりも、失落をひそかに願望する人の方が多いのではないか(私のように)。
オーウェルの『1984年』では、人々を情報管制下に置き、外部に空想的な強敵を作り上げてプロパガンダを繰り返し、少しでも政府に疑念を抱いたりすると拘束して洗脳する世界が描かれている。いまの習近平政権にそれに似た傾向が出てきた、と私は思っている。
拝金主義の人々がいるらしいたくさんの話題を見聞きし、しかも情報統制を強化する全体主義的な傾向がある中国にいささか辛口の物言いもしたくなろうというものだ。
そのときに、中国にもこんな風に真面目でモラルのある人がいる、そしてそれが普通だ、と反論されたりすると面食らう。当たり前である。全員がモラルを失い拝金主義になったら、マッドマックスの世界である。『1984年』のように極端な世界でも、我々から見れば普通の人がいるものである。そのような真っ当な人がたくさんいるから、中国には問題はない、と言う結論にはならないのであって、問題点は問題点である。
そのことは中国の悪口を言ったから日本は正しいなどということには決してならないことと同じである。日本の問題点は問題点としてあるのである。以下アメリカも同様。モラルの低下がその問題点の背景にあるのではと私は感じているし、そう感じる人は少なくないだろう。
では自分はどうするか、どう生きるか、と私は考えるのである。それを考えるために本も読み、旅もし、歴史を知ろうと努めるのである。自分のことしか考えていないではないかといわれれば、その通りである。考えても何もしないのである。申し訳ないことである。
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コメント
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「モラルとは」 と考え始めるとよくわからなくなります。
でも、選挙後の朝日新聞は、ますますマスコミとしてのモラルが低下してることは確かです。
投稿: けんこう館 | 2017年10月29日 (日) 16時17分
けんこう館様
モラルとは何かを問い詰めていくと本一冊でもたらないほど説明しきれないものだそうです。
ただ、シンプルに考えれば、他人のことを、つまり自分のことだけでなく周りの人のことを考慮に入れて行動することかと思います。
自分が一番大事であることは仕方のないことですが、他人も同様に自分を一番大事だと思っていて、それぞれの利害はしばしば対立します。
それを互いに我慢し、認めることで全体としての利益が大きくなるように配慮する能力とでもいいましょうか。
つまり自分だけ良ければ好いというのは違うのではないか、と思う能力のことでしょうか。
マスコミのモラルは、自分が正義であるという思い込みが権威になってしまったもので、権威を護るために、つまり自分の信ずる正義のために嘘をつくという構造でしょうか。
権力を悪と断じて相手を受け入れないし認めませんから、譲ることが不可能になっているのでしょう。
間違いを認めて謝罪することは、正義を否定することだ、くらいに思っているのかもしれません。
投稿: OKCHAN | 2017年10月29日 (日) 18時28分