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2017年12月16日 (土)

ジェフリー・ディーヴァー『コフィン・ダンサー(上・下)』(文春文庫)

 訳・池田真紀子。原作も良いが、訳が素晴らしい。

 『ボーン・コレクター』という映画を観た方もおられるだろう。出演はデンゼル・ワシントン、アンジェリーナ・ジョリーなど。その原作がジェフリー・ディーヴァーの同名小説である。映画を観たのが先か小説から読んだのか覚えていないがともに傑作である。原作と映画では登場人物のキャラクターに多少の違いがある。

 ベッド・ディテクティブというミステリーの分野がある。安楽椅子探偵とも呼ばれるが、探偵が犯罪現場に行かずに、もたらされた情報だけで推理する小説である。

 『ボーン・コレクター』も『コフィン・ダンサー』も主人公はリンカーン・ライムという、事故で頸椎を損傷し、首から下が麻痺して動かせない元ニューヨーク市警科学捜査部長で科学捜査の専門家である。寝たきりの状態で事件を推理し、犯人を追い、連続犯罪を阻止していく。

 このリンカーン・ライムを主人公とした小説はシリーズになっている。今回読んだ『コフィン・ダンサー』は『ボーン・コレクター』に次ぐ第二作。とにかく超絶の犯罪者を、それを上回る頭脳で追い立てていくリンカーン・ライムの推理はおもしろいのである。

 もちろん寝たきりでは推理することは出来ても捜査はできない。それをサポートするのがニューヨーク市警の刑事達や、科学捜査班の面々であり、それらの人物が活き活きと動きまわり、危険に遭遇していく。つまり探偵は単独行動が不可能であるから必然的に総合力で捜査が進められ、全体で一つの統一したキャラクターになってもいるのだ。しかもサポートの面々は優秀であり個性的でしかも魅力的である。

 特に片腕として働くアメリア・サックスという美女は大活躍するし魅力的である。映画ではアンジェリーナ・ジョリーが演じていた。彼女の目から語られるリンカーン・ライムは人間的で、弱さも欠点もあり、そこがさらに物語に深みを加える。下半身麻痺であることに悩まぬはずがない。それを押さえ込む超人的な意志を持つライムだが、ときに弱さをさらけ出す。それを見て見ぬ振りをするのが彼をサポートする面々の優しさであり、それに一歩踏み込めるのがサックスなのだ。

 コフィンというのは棺桶のことである。コフィン・ダンサーと呼ばれる暗殺者が今回のターゲットなのだが、正体はまったく不明。しかも手がかりとなるものをまったく残さないばかりか、ときに意図的に残すことで捜査をミスリードする巧妙さを持つ。

 ついに犯人の先手を打ち、罠を用意して待つライムたちだったが・・・。「最大の武器は人を欺くこと」とうそぶく犯人のその言葉こそが絶体絶命のサックスを救う。

 そして暴かれる意外な黒幕。最後の最後まで楽しめる。

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コメント

原作は傑作ですが、映画は駄作です

''あ'様
映画化されているとは知りませんでした。
コメント、ありがとうございます。

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