利根川
新日本風土記というNHKの番組が好きである。全て観たいところだが、いろいろ気が多いから忙しく、時間的に無理なので特に興味を引いたものを録画して気が向いたときに観る。昨晩は『利根川』がテーマだった。利根川水系の周辺のいろいろな風物が取りあげられ、江戸時代、徳川家康によって利根川が江戸湾に流れ込んでいたのを江戸川と銚子へ流れ出ているいまの利根川に分流された歴史も語られていた。東北から江戸への物流のメインロードでもあった。
あの伊能忠敬で有名な佐原は私の母が小学生時代を過ごした街であり、子供時代から幾度となくその佐原の話を聞かされていて、実際に何度か訪ねている。佐原や水郷は自分のふるさとではないながら、なんとなく懐かしい場所でもある。取りあげられるとなんとなく自分のふるさとのことのように嬉しいのが不思議だ。
千葉県生まれだから利根川には子どものときから思い入れがある。千葉県北部は利根川以外に大きな川がなく、関東ローム層と成田砂層で出来た地質であり、水田をするために必須の水には苦労してきた。特に高台である成田周辺は水がないので開墾が遅れ、そのために幕府の馬場があっただけで、かろうじて畑作農家が細々と暮らしていた。彼らは苦労してそんな場所で畑地を開いていったのである。
私の母方の祖父はその地区の出身である。祖父母の墓もその地区にある。政府はだから利用度の低い場所としてそこを新空港の場所とした。それなのになぜあれほど激しい反対闘争が起こったのか。人一倍苦労していた開拓の人々の心情を慮ることなく、安易に移住を勧めようとしたことが彼らの逆鱗に触れたのである。立ち退き交渉の担当者は、地元の人たちの苦労が積もっただけ土地に対する思い入れが深いことに思いが至らなかったのである。そのことは祖父から教えられた。祖父は空港建設に反対ではなかったけれど、古い知り合いが反対闘争に参加しているのを観て舌打ちしながらも、その気持ちが良く解ってもいたのである。
千葉県北部には江戸時代、徳川吉宗が開いた新田が多い。それはため池をいくつも作ることで可能になったことである。私が生まれ育った家のすぐ裏手には周囲一キロの人工池があり、周囲に桜の木が植えられていて、地区の桜の名所である。その懐かしい家も既に処分し、いまは更地である。
私が小学生の頃、水田のために両総用水という水路が作られた。直径2メートルもあるパイプで利根川から南下させるように水を引き、田畑をうるおすことができるようになり、東京へ野菜を供給することができるようになったので農家は豊かになった。近郊農業は収益が高いのである。
それまで水道はため池の水を浄化していたけれど、両総用水の水に変わったとたん、味が良くなった。ため池の水はどうしても夏場は少し有機物が多い味がする。利根川の水にはそれがないのである。
番組では千葉県の話はほとんどなかったけれど、利根川ということになると自分の関わった利根川のことをどうしても考えるのである。育ったふるさとを思うのである。そうしてまた一度佐原へ行って見たい気持ちになったのである。あそこにはとても美味い地酒もある。弟の家から車で行けばそれほど遠くもない。ちょっと心が動いている。『ふるさとへ向かう六部は気の弱り』か。
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OKCHANさん
NHK小さな旅(午前5時15分)再放送
千葉県
千葉県 養老渓谷

山芋を掘り、
ドジョウを餌に鰻を釣る。
土曜の朝は落語+旅。
]ストレス解消できますよ
投稿: ちかよ | 2017年12月 2日 (土) 14時09分
ちかよ様
私のストレスは自家中毒のようなもので、いまは外部的な要因はほとんどありません。
精神を安定させることができれば安らかな気持になるはずです。
何をすればそれが出来るのか模索中ですが、そのあがきそのものが自分のストレスになっているというわけです。
ヒマだからこそで、贅沢な悩みです。
しかし何もせずにじっとしていればますますイライラするでしょうね。
投稿: OKCHAN | 2017年12月 2日 (土) 14時33分