呉智英『真実の名古屋論 トンデモ名古屋論を撃つ』(ベスト新書)
転勤で名古屋に暮らすようになってから丸33年以上経った。思えば現在までの人生の後半半分を名古屋で暮らしたのであり、多分ここが終の棲家になるだろう。厳密に言うと境界の新川を越えているので名古屋市域とはほんの少し外れていて名古屋市民ではないが、名古屋駅まで名鉄の普通電車で20分足らずなので、名古屋人みたいな顔をしている。
私の限られた経験でいえば名古屋はいいところである。暮らし易い、住人はぎすぎすせずフレンドリーである。隣人と疎遠になりやすいマンションに暮らしていてさえそう思う。
その名古屋を揶揄するような言説が巷に氾濫していて、全くの妄説とまではいわないが、いささか不満であった。そのような言説は元々あったものではなく、犯人がいるのだ、と主張するのがこの本である。いわゆるトンデモ名古屋論を振りまいている犯人の無知と間違いをとことんこき下ろし、罵倒したのである。いつものように呉智英先生、暴走気味でいささか過剰でもあるが、痛快でないこともない。
名古屋人は云々という言説に対して私はそれほど神経質に不快を感じない。まあそういえばそうかな、というところもあり、しかしそれは別に名古屋人に限ったことでもないだろう、というぐらいに感じてきた。
著者の呉智英はくれともふさと読む。若い頃からそのユニークな主張をおもしろく読んできたので彼の本はたくさんあった。あった、というのは今回ほとんど処分してしまったからである。博識でその知識を以て相手をとことんこき下ろす、というやや感情的な論客である。
この本では名古屋のいいところがたくさん紹介されている。確かに名古屋は観光地としてはあまり見るべきものがない。しかし物作りの街として、そして家康が暮らしやすい街として作り上げたことは、先日のブラタモリでも紹介されていた。
ただひとつ、名古屋について言いたいことがある。三大ブスの産地、などといわれているが、初めて名古屋に来たときになんと美人の多いところかと私は思った。どんなところにも美しい人からそれなりの人、そして残念な人がいるものだが、名古屋は美人の頻度が高いと思う。このことは同様に言われる仙台でも感じた。街の女性を勝手に品評したかったら黄昏時の繁華街を歩けば良い。その街の雰囲気とともに女性のレベルも実感できるものである。
それだけでも名古屋を貶めるような言説は誤りであると思う。
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コメント
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尾張北部の田舎で育った私から見れば大都会でした。名古屋からの転校生にはコンプレックスを感じてました。(笑)
『エビフリャー』とタモリが馬鹿にしてましたが、我が家では「エビフライ」 と言ってました。
タモリと河村市長が名古屋弁のイメージを悪くしてます。
投稿: けんこう館 | 2017年12月 6日 (水) 10時58分
けんこう館様
先日のブラタモリで、タモリは名古屋出身の友人が多いのだ、と言っていました。
私はあまり彼に悪意を感じたことはありません。
河村市長は無理矢理名古屋弁を強調することでわざとらしさを感じますね。
いまどきあんなしゃべり方をする名古屋人などいません。
投稿: OKCHAN | 2017年12月 6日 (水) 12時49分
おはようございます
私の弟夫婦もかつて転勤で名古屋に住んでいました。
遊びに行ったことがあるのですが、弟夫婦に名古屋グルメ責めにあいました・・・。
櫃まぶしといい台湾料理、そして今は全国展開を始めたコメダ珈琲といい名古屋グルメの意外な美味さに名古屋の奥の深さを感じました。
では、
shinzei拝
投稿: shinzei | 2017年12月 7日 (木) 06時04分
shinzei様
尾張徳川の豊かな街でしたから、老舗の和菓子の美味しい店がけっこうあります。
関西から来た人などは名古屋の味噌煮込みうどんを酷評しますが、私は初めて食べたときにとても美味しいと思いました。
赤味噌(八丁味噌など)は味噌の原型のようなものですが、とてもうま味の強い味噌です。
豆腐の味噌汁などには最適です。
味噌煮込みうどんのうどんが硬いのが、煮えていないと思われるようですが、山梨などのほうとうや、群馬などの切り込みうどんの原型ではないかと思います。
そのねっちりとした食感は独特で、私は好きです。
昔とくらべてずいぶん高くなりました。
投稿: OKCHAN | 2017年12月 7日 (木) 07時36分