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2017年12月25日 (月)

貝塚茂樹・伊藤道治『古代中国-原始・殷周・春秋戦国』(講談社学術文庫)

 あとがきにも記されているが、1974年に全十巻で刊行された『中国の歴史』の第一巻を独立した本として学術文庫に収録するにあたり、すでに物故(1987年死去)している貝塚茂樹の代わりに伊藤道治が新しく追加されている歴史的な史実などを追加補筆した本である。だから1990年代の知見が加えられている。

 貝塚茂樹は京都学派の歴史学者で、あのノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士の兄である。父親も兄弟も錚々たる学者ばかりの一家で、生まれつき頭のデキの善し悪しというのはあるものだと思い知らされる。

 蛇足ながら、同名の貝塚茂樹という教育勅語を称揚するいささか時代錯誤で右ネジの学者もいるが全くの別人である。

 中国の歴史の本を何種類持っているだろうか。何種類読んでも何遍読んでも頭に入らないのは悲しいが、不思議なことに毎回おもしろく読めてしまうのである。これが西洋史だったりしたら数頁でさじを投げる。書かれていることはただの文字でしかなく、イメージが全く浮かばないのである。日本の歴史ならいささかマシだが、おもしろいと思えない。

 中国人ではないのに中国の歴史がおもしろいというのはどういうわけか分からない。繰り返し読んでいるうちになじんだのだろう。とりわけ古代史は好きである。特に春秋戦国時代がおもしろい。この時代に人間の社会的行動や精神活動の原型がすべてつくされている気がしている。ここをとことん読めば世界の理が分かると言っても過言ではないと思っている。

 ただ、この本では歴史以前の考古学的な部分も詳細に書かれていて、さすがにその部分は読み進むのに骨が折れた。しかし人間が社会的な行動を始めた頃の話であって想像力を刺激しないことはない。

 読了までに一ヶ月以上かかってしまった。今回の温泉三昧の中で一気に読み終えることが出来たのは幸いであった。春秋戦国時代についてはなんとなくこのザル頭にもイメージが刷り込まれており、とてもなじみ深くなっているのである。この面白さ、分かるひとには分かるはずだが、興味のない人にはこんなものを面白がるのはおかしなやつにみえるだろうと思う。

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コメント

おはようございます
中国史は人間の行動パターンを学習する上で最良の教科書ですね。
だいたい今の状況は中国史を俯瞰すればそのひな形みたいなものが出てきます。
中国を知る上でその歴史を知らなくてはそもそも中国を語るには物足りないでしょう。
では、
shinzei拝

shinzei様
日本の古典を読むためにも中国の歴史や文化を知ることは必須ですね。
明治頃までは知識人にとって常識でした。
ところでいまの中国人はその中国の歴史や文化を承知しているのか?
何度か立ち寄った中国の書店にはそれなりの古典が並んでいましたが、誰もその前にいませんでした。
他のコーナーにはたくさんいたのに・・・。

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