映画『ひつじ村の兄弟』アイスランド・デンマーク・ノルウェー・ポーランド映画
監督グリームル・ハゥコーネルソン、出演シグルヅル・シグルヨンソン、テオドール・ユーユーリウソン他。
舞台はアイスランドの寒村。以前も書いたことがあるが、アイスランドでは名字はなく名前だけしかない。監督や出演者の後半の名前の最後に、ソンがついているであろう。それは息子という意味で、シグルヨンソンといえば、シグルヨンの息子という意味だ。つまりシグルヨンの息子のシグルヅルというわけである。
グミー(シグルヅル)とキディー(テオドール)は兄弟で隣どおしで住んでいるが、互いに長いこと口も聞かない間柄である。この村ではみなひつじを飼うことを生業としており、毎年品評会が開かれるが、兄弟の育てているひつじは特に優秀な血統のもので、優勝は兄弟のどちらかが勝ち取ることが多く、今年は兄のキディーが僅差で優勝し、グミーは二位となる。
その優勝した兄のひつじにグミーは異常を発見する。スクレイピーという感染症ではないかと疑った彼は検疫所に連絡する。それを妬みからと考えた兄のキディーは激怒し、弟の家に向けて猟銃を撃ち込む。
やがてそのひつじがスクレイピー(あのクロイツェル・ヤコブ病である)であることが判明する。そうなると近隣のひつじはすべて殺処分しなければならない。村は恐慌状態になるが如何ともしがたい。グミーも手持ちの大事にしていたひつじを処分せざるを得なくなる。保健所が処分のためにやって来たとき、そこにはグミー自身の手によって殺されたひつじの死骸の山があった。
ひつじの処分に反対するキディーは抵抗するが、抵抗しきれるものではない。その恨みは弟のグミーに向けられる。元々意固地だったキディーはますますかたくなになり、政府の保証の交渉にも応じようとしない。
やがてそのための交渉役は意外な事実に気がつく。そもそもキディーの土地や建物はすべてグミーのものであった。兄弟の父親はキディーを嫌い遺産をすべてグミーに残したのである。
兄弟の仲はこれ以上ないほど悪化したのだが、キディーの資産がすべてグミーのものだとすると、キディーの牧場の問題はすべてグミーの責任ということになる。話し合うしかないのであるが・・・・。
怒れるキディーはある日グミーの秘密を握ってしまう。それはけっして知られたくないものだったが、キディーはその秘密を共有することでグミーの気持ちが分かってしまい、混乱する。
兄弟の仲がどのようになっていくのか。憎しみと愛情の極限とは何か。ラストシーンが痛切にそれを考えさせてくれる。忘れられない一作になった。
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