春遠からじ
ベランダの上には上の階のベランダがある。これが張り出した廂(ひさし)となっている。冬は太陽が低いので、廂に関係なく部屋のかなり奥まで直射日光が射し込む。夏は太陽が高いから廂に遮られて部屋の中には日光は直接射し込まない。まことに具合がよく出来ている。
時間とともに太陽が移動する。光を浴びるのは心地よいのであるが、日に当てたくないものも身の廻りにある。お茶各種、薬、光で劣化するディスクの類である。しまっておけばよいのだが、坐ったまま用を足そうとするので光の当たる場所に出たままになっているのだ。日射しがありがたいような、ちょっと迷惑なような、しかしカーテンを閉めるのもどうかと思ったりしている。
気がつけば上に何かをかぶせたりして光が当たらないように注意はしている。その日射しの射し込む範囲がこころなしか狭まっているようである。年末年始の頃にはあんな奥まで射し込んでいたのが、このごろは多少遠慮した位置にまでしか射し込んでいない。
日が長くなるに従い、太陽は少しずつ高くなっているのであろう。まだまだ冬の寒さは続くけれども、その中に春に向けての兆しがちょっとだけ感じられる。虫ではないけれど、啓蟄に向けて私の心も蠢きだして来そうである。真冬にこそ思う、春遠からじである。
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