もともとゆるいけれど、さらにゆるんでいる
明治生まれの祖父は、「男は人生に三度だけ泣くことが許される」と言った。生まれたときと親が死んだときの三度だという。それ以外には人に涙を見せるな、というのだ。
父はそんなことは言わなかったが、思い返せば父の涙を見たことは一度もない。すでに親は死んでいたからもう泣く機会が無くなっていたからだろうか。
昔の男はどうして泣かずにいられるのだろうか。私は情けないことにすぐ泣く。それでもさすがに人に涙を見せるのは恥ずかしい。子どもたちは私の涙を見たことがあるだろうか。私はドラマや映画の泣かせるシーンにとても弱い。子どもたちはそういうときの私の涙を見ているだろうか。多分子どもたちもけっこう私に似ているから、自分の涙を隠すのに忙しくて私の涙は見ていないかも知れない。
NHKの『大岡越前』の第四シリーズが始まっている。東山紀之の大岡越前がけっこうサマになっていて、なかなか好い。昨日第四話の『万病治した孝行娘』がまた泣かせる話であった。その孝行娘のお鈴という役を演じていた荒井萌という女優が良い感じであった。憎まれ役を笹野高史が演じてドラマを盛り上げていた。好い役者が悪役を演じるとドラマ全体が盛り上がる。
この時代ドラマは大人向けのお伽噺であろうか。世の中はこんなに単純ではないし、心がねじ曲がった人間はそうそう簡単に改心などしないものだ。それが大岡越前にさとされて自分の非を心から悟るのは、なかなか無いことだと大人なら身に沁みて知っている。しかしそれを知っているからこそ素直に自分の非を悟る姿に救いを感じる。そうだったらいいなという思いが誰にも強くあるからだろう。
というわけで最後の裁きで、けなげな娘・お鈴の言葉や姿につい目頭を熱くして、「よかった、よかった」などと大のオトコが独りで頷いているのである。言い訳がましいが、祖母、母、と続いて涙腺がゆるい血筋である。もともとゆるいのが歳とともにさらにゆるくなっている。まあ誰も見ていないからいいか。それに、感情に波風を立たせるのは悪いことではないだろう。
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