借金
私の親は金の貸し借りで余程嫌な思いをしたことがあるのだろう。私が子どものときから「金は借りたり貸したりするな、どうしても義理で貸さざるを得なかったらやったと思え」「金を借りる人は困っているから借りるので、困っている人が返せるはずはない」と繰り返し言っていた。借金は人間関係を壊す、とはよく言われることだが、それを痛感したことがあるのだろう。
月賦もローンも嫌いであった。それも借金だと考えていたし、確かにその通りである。だから大きな買い物でもすべて現金払いに決めていた。家を買ったときも現金である。
私も若いころ人に金を貸したことがある。一度は同僚への小金の一時的な融通で、約束の期限に遅れたけれど返済された。しかし私はその同僚に、どんなに困っても二度と貸さない、と通告した。返済が遅れたからそう言ったのか、二度目を受け入れたら繰り返し受け入れることになるからそう言ったのか自分でも分からない。多分わずかな金なのに、その同僚を見るたびに金のことが頭に浮かぶのが不快だったからだろう。
借りるほうは理由があって借りている。こちらはゆとりがあるから貸している。借りている方が負い目があるはずであり、貸しているほうが立場は優位に見えて、実は貸しているほうに催促しにくいという負い目が生ずるのは不思議なものだ。
もう一人は当時とても世話になった先輩で、多少まとまった金を貸した。そのときは貸したけれど多分返済されないだろうと思っていた。あとで知ったが、たくさんの人に借りていたようだ。金銭的にルーズな人だが、魅力的でいろいろなことを教えてもらった。
結局会社を辞めることになった。貸した金はもちろん惜しいとは思ったけれど、でもやったものだと諦めてもいたのでそれほど傷つかなかった。その人との縁が切れたことの方が惜しかった。
一年後だったか二年後だったか、ひょっこりその人が訪ねてきて貸した金を返してくれた。退職金やそのあと働いた金などで、借りた金を返して歩いていて、私がようやく最後だという。私は返された金の中から餞別としてなにがしかを彼に渡した。そしてどんなに困っても二度と貸さないこと、それを承知ならその後もつき合いを続けることを伝えた。
そのときは尾羽うち枯らしていたが、次に会ったときは立派な身なりをしていた。会うたびに浮き沈みの激しい生き方をしていることが分かった。十数年前に会ったのが最後でそれから音沙汰がない。
両親が私に教え込んだように、まことに金が絡むと人間関係は損なわれる。金にきれいに生きるのは難しいものだ。自分ではちゃんとしているつもりでも人にどう見えているのか自信はない。そもそも私は割り勘で飲み食いしても飲む量や食べる量が人より多いから、それだけでも不公平であることにときどき気がつくが、それを厳密にすることは出来ないものだ。こだわりは関係をギクシャクさせる。
眞子様の婚約相手の小室家の借金報道を見ていて、互いの言い分が大きく食い違うことは何も不思議ではなく、当然だろうと思っている。ただ問題は借りたかもらったかしたほうにその自覚のないことが、貸したつもりの側の怒りを呼んだことだけは分かる。まことに金のやりとりは人間関係を損なうものであり、そのとばっちりはひとを不幸にするようだ。
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奨学金と家のローンは仕方なく利用しましたが、もう二度と借りたくありません。
個人ローンのテレビCMが当たり前のように流れてますが手軽に利用してる人がたくさんいるということになります。不思議な気がします。
投稿: けんこう館 | 2018年2月14日 (水) 10時09分
けんこう館様
私も息子が大学時代、奨学金を借りましたが、考え直して二年だけにして打ち切りました。
借りさせたことを深く後悔しています。
人生は不思議なもので、借りるほうに廻るとなかなか負債のない世界に戻ることができなくなって、深みにはまるようです。
その分もうけている人がいるということで、金貸しのますます盛んで尽きない理由でしょう。
投稿: OKCHAN | 2018年2月14日 (水) 10時38分
奨学金と家のローンでお金を借りました。前者は教職についたので返済しなくてもよかったですが、敢えて返済しました。 それは「感謝」だけでなく「矜持」を示すことでもありました。 奨学金がなければ、母子家庭だったので大学院はもちろん、大学にも行けなかったでしょう。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/4383/trackback
また家はローンがなければとても買えなかったでしょう。それも4月には全て清算し、「後顧の憂」を断つつもりです。
借金はしたくありませんが、
<借金しなくてもやっていける人と、そうでない人がいます>
こうしたことから税制はフロー(所得税や消費税)にかけては軽く、ストック(相続税や譲与税)にかけては重くした方が公平で平等な社会になると思っています。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/2823/trackback
投稿: Hiroshi | 2018年2月14日 (水) 11時53分
Hiroshi様
「借金しなくてもやっていける人と、そうでない人」がいることは良く承知しています。
私は親の教えもあり、借金をしないことを信条にしていますが、それが貫けているのは幸運であるからだということも自覚しているつもりです。
借金をすることで大きなお金を扱い、大きな利得を得ると云う生き方もあることも承知しています。
負債のある人生は、ときに負債を膨らませることが多いことを目の当たりにしていますので、ささやかに無借金の人生を全うしようと思っています。
投稿: OKCHAN | 2018年2月14日 (水) 12時17分
OKCHANさん
借金=カードローン
あのCMが嫌い(`ヘ´) プンプン。
生活のため、軽い気持ちでキャッシングを始めた。(弁護士さん過払い金返還請求)
それがイヤで、
我が家・娘息子娘、嫁
すべてキャッシュです
娘・息子も3歳から家業の牛乳配達お手伝いしましたよ。
今後、貧困老人が増えるそうです。
泥棒さんにご用心ください(゜゜)(。。)ペコッ
投稿: ちかよ | 2018年2月14日 (水) 12時56分
ちかよ様
カードローン、パチンコ、エステ、カツラ、健康食品・・・。
本当に最近のCMには多くなりましたね。
泥棒は、むかし格闘技をやっていましたので、一対一なら何とか撃退できると思います。
狙われるほどの金もありませんが。
投稿: OKCHAN | 2018年2月14日 (水) 15時15分
おはようございます
私も日本育英会(現日本学生支援機構)の奨学金の返済が残っています・・・。
返済完了は東京オリンピックイヤーの2020年の9月です・・・。
まあ、好きなことを学ぶのを助けてくれた、という恩もありますが、月12000円返し続けています。
救いといえば私は一種なので利息はつかないのですが・・・。
では、
shinzei拝
投稿: shinzei | 2018年2月15日 (木) 06時51分
shinzei様
育英会は営利団体ではないのでしょうが、その組織そのものの存続のためには人が必要であり、その人達を維持する経費が必要で、それを利子でまかなっていると思われます。
つまり組織の存続の経費が学生に負わされている面があるのではないかということです。
大学院まで進む学生が多くなり、支払われる奨学金の総額も多額になっていますから、有利子の奨学金の負担は案外大きく、支払いに苦労している人が多いのではないかと愚考しています。
投稿: OKCHAN | 2018年2月15日 (木) 09時11分