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2018年2月25日 (日)

明の滅亡前後について(1)

 先般、彭遵泗『蜀碧』という本を紹介した。明末の反乱軍の首領の一人である張献忠が四川で大虐殺を行った記録である。ただし、この本は清の時代に入ってから百年ほど後に書かれており、当然著者は実際に事態を見たわけではないからすべて真実とは言えないところがある。

 満州族が中国に侵入し、清朝をうち立てるにあたり、多くの犠牲者が出ているが、そのことは清朝の時代には大っぴらに語ることはできなかった。そのかわりに反乱軍の張献忠の暴虐をことさらに誇張するという作為が働いている可能性がある。

 実は『蜀碧』が収められた東洋文庫には、朱子素『嘉定屠城紀略』と王秀楚『揚州十日記』という明末の清軍の侵攻に伴う江南地区での混乱の記録書が収められている。そしてこちらはどちらもリアルタイムにその様子を体験した著者による記録である。清朝時代にはこのような文章はおおやけにできないので、書き写されながらひそかに流通していたもので、清朝末期になって多くの人の眼に触れるようになった。

 日本には江戸時代後期にすでに持ち込まれていたようで、これらすべては内閣文庫所蔵本として残されている。訳者の松枝茂夫はこれらの内閣文庫所蔵本や異本を比較してここに訳出した。

『嘉定屠城紀略』はどちらかというと歴史書の体裁のまとめ方で、事実を客観的に時系列で並べてある。そのぶん資料としての価値は高いが、面白みに欠ける。『揚州十日記』のほうはまさに自分と身内に起こった出来事を見たままに書き記していて、資料としては断片的となるが、文学的にははるかにリアルで生々しい。ともにそれほどの量ではないので両方読了したが、確かに『揚州十日記』は記憶に残る記録だと実感した。こちらは佐藤春夫が昭和初年に訳したものもあるという。

 その紹介をしようと思ったが、何より明末の清初の歴史を簡単にまとめておかないとその意味が分かりにくいと思うので、解説にかなり分かりやすい時代背景が描かれているのでそれをもとに自分なりにまとめ直して何回かに分けて掲載しようと思う。

 これは自分のためのものなので、興味のない人には退屈かもしれない。面白いと思うことは人によって違うものであるし、私はこのような中国の歴史を面白いと思う人間で、その歴史から中国というものを理解する手がかりにしようと思っている。このなかには文化大革命とは何だったのか?という私の終生のテーマを解く手がかりも当然あるはずなのだ。

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コメント

ご無沙汰しております。私は中国史で一番面白いのは春秋戦国と明 清入れ替え戦だと思っております。
スーパースターがぞろぞろ出てくるあの時代に興奮を覚えます。
Okちゃん版明 清入替戦絵巻楽しみにしています。
『揚州十日記』はショックでしたね。こんな話で美味しいお酒が飲みたい。

周大兄様
江南旅行から帰ったら、一度北関東へ参りますので、よろしくお願いします。
明滅亡前後の話はほとんど本からの引き写しになります。
知らない人が多いと思いますので。
人名や地名、言い回しなどは端折ったり直して多少分かりやすくしようとは思っています。

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