映画寸評(2)
『X-DAY 黙示録』2016年アメリカ映画。
監督ジョエル・ノヴォア、出演ジャクソン・ハースト、ヘザー・マコーム他。
月食の日に地下から魔物が大挙して地上に現れて人間を襲う、という物語であるが、この事態は映画の中では繰り返し起こっていることで、そのたびに百万単位の人が命を落とす。月食だから必ずこの事態が起こるわけではなく、その兆候が必ずある。そして人類は無力なままではなく、それに対する備えをしている。魔物が現れる場所はある程度想定されるからである。
というところまではなんとなく設定として理解したのであるが、そもそも月食のあいだだけ魔物は活動し、月食が終わると引き揚げるというのである。それならせいぜい二、三時間のことであろうと思うのだが、なんと昼間も含めて延々と魔物は活躍する。昼間に月食が起こることはあり得ない。地球が月と太陽の間に入ることで月食が起こるわけで、夜の側で月食が見えるとき、地球の昼の側ではそもそも月は見えるはずがない。それが見えるのである。月食と日食がごちゃ混ぜのようである。しかも魔物に対抗したり対策に動く軍隊などがあまりにも愚かである。これでは人類が滅亡しないのが不思議だ。
というわけでカルト映画にしてもあまりに設定がむちゃくちゃである。そんなことはどうでもいい人向き。
『スタンドオフ(2016)』2016年カナダ映画。
監督アダム・アレカ、出演トーマス・ジェーン、ローレンス・フィッシュバーン他。
カナダ映画は絶望的にお粗末な映画が多いが、この映画は良く出来ている。何しろローレンス・フィッシュバーンである。両親を事故で失った少女が叔父に連れられて墓参りにやってくる。近くの墓地で金持ちと思われる家族の葬儀が行われている。少女はカメラが趣味で一眼レフのカメラをいつも抱えている。叔父に「葬式の写真は撮るな」と注意されていたのだが、ついそちらにカメラを向ける。そのとき銃声がして墓地にいた人々が次々に射殺される。そして現れた覆面の男が棺を入れる穴に次々に死体を放りこみ始末をしていく。そのとき男が覆面をとり、少女は思わずカメラを向けてシャッターを切る。そこへ叔父が少女捜しにやってくる。
これが出だしのシーンで、あとは少女が逃げこんだ一軒家での住人の男と殺し屋の息詰まる攻防戦が延々と続く。殺し屋がフィッシュバーンである。住人は元軍人で子どもを事故で死なせ、妻に去られて独り暮らし。生に絶望している。
これは面白い。結末がどうなるか全く予想がつかないのである。拾い物の映画であった。お薦め。
『インビジブル・エネミー』2015年イギリス映画。
監督ニック・ギレスビー、出演ルパート・エヴァンス、スチーブ・ギャリー他。
典型的な不条理映画。つまり意味不明で解釈不能の映画である。観た人が勝手に自己流に解釈するしかないが、釈然としないものが残るだろう。
林の中を兵士が駈けていく。女性兵士と出会った二人は仲間のところへ向かうのだが、そもそもだれが敵なのか良く理解していない様子である。ようやく仲間たちと合流するが、リーダーは黒い袋で顔を隠して赤い服を着た二人の人物をロープで繋いで連れており、捕虜なのだという。
農場のようなところで敵に襲撃されるのだがその姿は見えたり見えなかったりして、しかもその姿は異様である。一人が負傷してしまうが、やむなく置いてきぼりにして逃走する(あとで登場する)。そして彼らは草地に放置されている装甲車に逃げこむ。これで安全になったのだが、装甲車の中は狭く、しかも動かない。閉じこめられた中での意味不明のやりとり、そもそも敵が誰でどんな目的で闘っているのか。
不条理映画は嫌いではないが、ちょっとくたびれる映画であった。くたびれても自分なりに答えを見つけられれば救いがあるが、残念ながら私には答えは見つけられなかった。解釈に挑戦したい人はどうぞ。
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