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2018年5月 8日 (火)

『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』磯田道史(NHK出版新書)

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 NHKBSの『英雄たちの選択』という番組をご覧になっている人もいるだろう。あの番組のまとめ役をしているのが著者の磯田道史氏だ。歴史上の個別の史実と、全体を大づかみしての歴史の流れの意味を調和して語ることのできる人で、なるほどそうなのかと思わせてくれることが多い。

 磯田道史氏は史学者。史学者は司馬遼太郎を語ることがない、と著者も前書きで書いている。それを敢えて史学者として司馬遼太郎の視点をベースに日本の歴史を語っているのがこの本である。

 実はこの本を読む前に『司馬遼太郎が語る日本 未公開講演録Ⅳ』を読了したばかりだ。そちらはむかしNHKで放映された『雑談「昭和」への道』全12回がベースとなっている。これが後に『「昭和」という国家』という本のベースになっており、さらにそれが展開されて『この国のかたち』全六巻となったものである。そして磯田道史氏もしばしば『「昭和」という国家』を引用して司馬遼太郎の歴史観を解析している。 

 私が学生時代からテーマにしているものがあって、一つは「中国の文化大革命とはなんだったのか」であり、ひとつは「なぜ日本は敗戦必至の戦争などを起こしてしまったのか」であり、そのことはこのブログでも繰り返し書いている。

 日本が戦争に至った経緯についてのひとつの考察が司馬遼太郎のこれらの文章から得られ、それは私の同感するところでもある。そしてそれを司馬遼太郎にのめり込みすぎずに斜めからの視線でさらに分かりやすく語ったのがこの『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』なのである。

 さまざまな歴史の転換点があり、そのときどきにその転換に大きく関わった人々がいるが、残念なことに日露戦争以後、転換点に関わるほどの人物が存在しなかった。どうして負けることが明らかな戦争に突入するまでにそれを阻止する者がいなかったのか。そして愚かな戦争を終わらせるために命をかけた人がいなかったのか。

 すでにもうそのような人は現れないのだ、と覚悟して、では無力に近い自分はどうするのか。そのことを考えることが大事なことなのだと感じてずっとそれにこだわっている。それはそのまま日本という国を考えること、日本人である自分を考えることでもあると思っている。

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コメント

以前、「司馬遼太郎の世界」に引き込まれ、全ての事が納得できたような気になっていました。その後長いこと経って、読み返してみると。納得できない自分を発見しました。

しかし、それは彼が偉大な観察者であることを否定するものではなく、我々が「巨人の肩にのった小人」ゆえ、だと思っています。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/3272/trackback

Hiroshi様
同感です。
すべてを司馬遼太郎の価値観で見ることは彼も望んでいないでしょう。
歴史は常に新しい発見があって書き換えられますし。
彼も繰り返し言っていますが、この世界には多様性が必要です。
彼が教条主義を嫌ったのは多様性を否定するものだからだと思います。
彼が「鬼胎」と呼んだ昭和前期については、もう少し日本人は詳しく学び直す必要があると思います。
日本人の多くがあまりにも知らなすぎることが残念です。

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