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2018年5月29日 (火)

映画『ある海辺の詩人 小さなヴェニスで』2011年イタリア・フランス

 監督アンドレア・セグレ、出演チャオ・タオ、ラデ・シェルベッジオ他。

 イタリア北部の港町、小さなヴェニスといわれるキエッジャが舞台だが、主人公は中国の女性シュン・リー(チャオ・タオ)である。彼女は故郷に六歳の息子を残してイタリアに出稼ぎに来ている。息子は自分の父親に預けているのだが、もちろん彼女はいつもその息子のことを気にかけている。出稼ぎにやってくるときに借金があり、その借金を払いきらなければ息子を呼び寄せることもかなわない。

 縫製工場で働いていた彼女は、ボスの指示でキオッジャの小さな飲み屋で働くように指示される。そこは中高年の男達のたまり場で、やさしい男もいれば中国人に偏見を持つものもいる。かろうじてイタリア語で会話ができるだけの彼女は戸惑うことばかりだったが、アパートの同じ部屋に住む寡黙な女性とみんなから「詩人」と呼ばれる老人ベーピ(ラデ・シェルベッジア)だけが孤独な彼女をやさしく見守ってくれている。

 次第にキオッジャを自分の居場所として感じ始めた彼女は「詩人」と言葉を交わすようになる。彼も生まれはユーゴスラビア生まれのスラブ人で異国からこの町に来た男であるが、長く暮らしているので自分の居場所もあるし、遠浅の沖合に網小屋を持っている。身体が衰えての独り暮らしを心配して、離れた街に住む息子は一緒に暮らすように彼に声をかけ続けているが、彼は港を離れるつもりがない。

 孤独な魂がふれあう。淡々としたふたりの会話はふたりの孤独の慰めである。ところが田舎のことでもあり、そのふたりの仲が町中の噂になる。彼女はボスからベーピとつき合うならいままで返済された借金はなかったことにしてはじめに戻す、と脅される。これでは息子を呼び寄せることは永遠にかなわない。

 彼女はベーピが話しかけても無視せざるを得ない。さらにつまらない嫌がらせのことばが浴びせかけられる。我慢していたベーピが噂の火元である男に激昂する。その場はおさまったかに見えたが、店の外でその男に不意打ちを食い、ベーピは怪我をする。しかし彼女は彼を助けに行けない。

 間もなく彼女はその飲み屋をやめさせられて元の縫製工場で働くことになる。ある日彼女は驚く。彼女の借金は完済されたと告げられたのだ。しかも息子を呼び寄せることもできることになる。

 彼女はようやく取れた休みの日にキオッジャにやってくる。そこで彼女が知ったことはなんだったのか、そして彼女がとった行動はなにか。静かな映画で心に沁みる映画だ。これも記憶に長く残るだろう。たぶんこの映画を観る機会のある人は少ないと思うので少し詳しく書いた。

 主演のチャオ・タオは美人というタイプではないが微妙な表情に内面の感情を表すことの巧みな俳優だ。姿は似ていないが、なんとなく余貴美子に雰囲気が似ている。歯を見せずにほほえむ女性の品の良さ、やさしさと強さを感じた。歯を見せて美しく笑う女性が嫌いというわけではない。作り笑い、計算づくの笑いが嫌いなだけだ。

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