残されたことば
父は大正三年生まれで、生きていれば明日が104歳の誕生日。独り言をよく言っていたことは以前にも書いた。その独り言の中にしばしば「死してのち已む」とか「電光石火の如く」とか「身体髪膚これを父母に受く。あえて毀傷せざるは孝の始めなり」という中国のことばがあった。もっといろいろあったが思い出せない。
こういう独り言のときは私たち兄弟に言い聞かせたいときであるから、大きな声で言う。子どもを前に座らせて説教するなどというのが苦手な父だったから、独り言で言いたいことを伝えていたのだと思う。
いま私が遊び部屋にしている部屋は娘のどん姫の部屋だったけれど、彼女の机の前の壁には、わら半紙に書かれた父の言葉が残されている。父は本や新聞などから気にいった言葉や俳句などを引き写して書くのが好きだった。その中から選んでどん姫にこれをくれたのだろう。
「少年老い易く学成り難し
一寸の光陰軽んずべからず」
「いつまでもあると思うな親と金
ないと思うな運と災難」
「若いときの苦労はかってもやれ」
「いまといういまの時なる時はなし
いの時過ぎればまの時はくる」
「金剛石は磨かずば玉の光は出でざらん
人も学びて後にこそ誠の徳はあらわるれ」
父の兄弟はみな達筆であり、父も端正な字を書く。その端正な字で書かれたことばをいま眺めている。少なくとも書かれて二十年ほど経っている紙は少し黄ばんでいる。
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