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2018年5月 5日 (土)

映画寸評(13)

『蜩ノ記』2014年・日本映画。
監督・小泉堯夫、出演・役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子、寺島しのぶ、青木崇高、井川比佐志他。

 原作は葉室麟を読み始めたきっかけになった同名の時代小説。藤沢周平が「海坂藩」という庄内地方の架空の藩を舞台にいくつもの小説を書き残したように、葉室麟は九州の小藩である「羽根藩」を舞台にした小説を書いていてこれもその一つである。

 原作への思い入れが強くあり、そのイメージを壊したくなくてなかなかこの映画を観る気にならなかった。ようやく思い立って観てみたけれど、結果として好い映画だと評価したい。

 今回感じたことだけれど、時代劇の善し悪しは正座している姿の佇まいでずいぶん違うのではないかということだ。この映画の登場人物達の座る姿の静かな安定感が実に気持ちがよい。それを立ち位置からのカメラではなく、胸の位置やもう少し下から映している。一部を除いて台詞も必要最小限にとどめて、会話も少ない。沈黙が言葉以上のものを語る、そして人と人の心がそのことによってこそ伝わる、ということを表現することに成功している。

 全体に静かな映画で、時代劇らしい時代劇に仕上がっている。岡田准一の太刀さばきは見事であった。この人は腰が定まっている。武道を本格的にやっていることが見て取れる。三船敏郎の息子の大根役者である三船史郎が先代藩主役で出ていたが、ちょい役だからボロを出さずにいたのは幸いであった。この人、この監督の作品である『雨あがる』でひどい演技を見せていた。小泉監督は黒澤明の弟子らしいから、その縁でなにかの恩情で加えたのであろうか。

『MOZU』2015年・日本映画。
監督・羽住英一郎、出演・西島秀俊、香川照之、真木よう子、池松壮亮、松坂桃李、伊勢谷友介、長谷川博己、ビートたけし他。

 逢坂剛の原作のシリーズをもとにTBSが第一シーズンを、そしてWOWOWが第2シーズンを制作放映したが、その続編となる劇場版の映画である。WOWOWのシリーズ開始前にTBS版をCMを入れずにWOWOWで一挙に再放送してくれたので、全体を観ることができた。

 人間は生死や善悪を超越してしまうと、ずいぶん恐ろしい存在になるものだということを、これでもかとばかりに表現するドラマだったけれど、この劇場版はさらにリアリティすら超越してしまっているので、ある意味でコミカルになってしまった。松坂桃李の血まみれの狂気はあまりに真に迫っているので、笑うしかない。

 ところでドラマでもその存在が呈示されながら正体を見せなかった「ダルマ」が今回登場する。ビートたけしが演じてそれなりに迫力があるけれど、それに心酔する男たちが、どうしてそんなに心酔するのかが私には最後まで理解できなかった。そこがこの映画のウイークポイントのような気がする。それが少しでもいいから分かると、恐ろしさがぐんと増してもっと面白かったのに・・・。

 倉木(西島秀俊)や大杉(香川照之)の不死身さ加減が格段に向上している。普通、あんなふうにされたら死ぬだろう!この劇場版を観たために却って収まりがつかないことになった。続編が描かれたら、また観てしまうだろう。ただ、これ以上荒唐無稽にしないでくれるとありがたいが。それにそもそものモズ(池松壮亮)がこれでは霞んでしまったではないか。

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