映画寸評(14)
『図書館戦争 THE LAST MISSION」2015年日本映画
監督・佐藤信介、出演・岡田准一、榮倉奈々、田中圭、福士蒼汰、松坂桃李、石坂浩二他。
国家による思想検閲がエスカレートして、多くの本が焚書されている近未来世界でのはなしが描かれているのだが、それを「そういうこともあるかも知れない」と思うか、「まさかこんなことはあるはずがない」と思うかどうか。その焚書される本を護るために図書館法を盾に戦う主人公達と権力側の戦争が描かれている。
もちろん現実から見れば荒唐無稽な物語ではあるのだが、では中国や北朝鮮ではどうなのか。デフォルメされたこの物語ほどではないけれど、信じ難いほどの規制は現に存在する。日本でもそれが普通に行われたことであり、戦後それが進駐軍によってさらに巧妙に規制され、いまは自主規制という名で残されているという見方もできる。もちろん中国や北朝鮮ほどではないが。
この物語の世界での規制の名目は公序良俗の維持である。公序良俗の保持は大事なことであるが、その名のもとに誰かに都合の良い体制を維持する道具にされてはたまらない。それを象徴するのが本なのである。本を護るために命をかけるということが必要な時代など来て欲しくないが、本などどうでも良いという人が増えれば増えるほど、そういう世界が近づく。
本好きからすると感情移入するところはあるのだが、戦闘行為によって本が損なわれていくシーンは少々つらい。
『半落ち』2004年日本映画。
監督・佐々部清、出演・寺尾聰、原田美枝子、鶴田真由、柴田恭兵、樹木希林、吉岡秀隆、國村隼他。
「半落ち」とは犯人が犯行の一部を自供したことをいう警察の隠語。全部を自供することを「完落ち」というようである。
アルツハイマーの妻(原田美枝子)を自宅で介護していた元警察官の梶(寺尾聰)が、警察に「妻を殺した」と出頭してくる。捜査に当たった志木警視正(柴田恭兵)はその殺害経緯と動機を聴取する。ところが殺害して出頭するまでに丸二日間が経過しており、その間の行動についての供述だけがあいまいなまま梶は黙秘してしまう。
警察は警察官による尊属殺人の不祥事として「完落ち」として迅速な処理を進めようとする。梶はそれに同意して事件は警察の意向通りに処理されていくのだが、二日間の謎は次第に大きな疑問点としてクローズアップされていく。
警察、マスコミ、検察、裁判官のそれぞれが自分の立場からの真相究明を行っていき、やがてその謎の二日間の梶の行動とその理由が明らかになっていき・・・・。そこから先はネタバレになるのでここまでとする。この面白い映画(原作は横山秀夫の同名小説)をまだ観ていないのなら機会があれば観ることをお薦めする。大変面白いし感動もする。アルツハイマーの介護という問題に感じるところもあるはずだ。
実はこの原作の小説は直木賞候補になりながらある理由で選ばれなかった。そのことで論争になったことをこの映画のことを調べていて知った。梶が妻を殺したあとに死ななかった理由が若干不自然な感じがする点に関係しているが、気にする必要はないと思う。
樹木希林がすばらしい演技をしていた。この人はやはり名優だと思う。高橋一生が最後に大事な役で少しだけ出てくる。
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半落ちは映画も見ましたし、小説も読みました。私も大変勘藤したことを覚えています。それから、横山秀夫さんの小説は、数点読みましたね。
投稿: かんちゃん | 2018年5月11日 (金) 06時57分
かんちゃんへ
映画ももちろんですが、横山秀夫の原作であるテレビドラマもたくさんあります。
かなりシリアスでハッピーエンドでないものが多いので、精神にこたえることが多いです。
最近映画にひたっていて、出掛けないときは一日二本乃至三本観ています。
投稿: OKCHAN | 2018年5月11日 (金) 07時51分