映画寸評(11)
『殺戮にいたる山岳』2016年韓国映画。
監督イ・ウチョル、出演アン・ソンギ、チョ・ジヌン他。
廃坑のある山で、欲望にとりつかれた男たちとその犠牲になりかけた少女を護る老人との闘いが繰り広げられる。
山の中の廃坑ではむかし落盤事故があり、多くの人が犠牲になった。そこで息子を失った老婆はいまも欠かさず廃坑に花を供え、息子の冥福を祈っている。彼女は息子の忘れ形見である少女と二人暮らしである。ある日、廃坑近くで崖崩れがあり、そこを通りかかった老婆は崩壊のあとに光るものを発見する。
金のように見える鉱物を見つけた老婆は、知り合いの刑事にそれを伝えるが、刑事は金に間違えやすい黄銅鉱だ、と笑う。不審に思いながらも老婆はうなずくしかなかった。
数日後、いつものように廃坑にやって来た老婆はその刑事が引きつれてきた男たちに出会う。瞬時にあれが実際に金であったこと、刑事が自分を騙していたことを老婆は悟る。老婆は刑事を罵り、他のひとに知らせてやると息巻くのだが・・・。
祖母がいなくなったので少女が探しにやってくる。廃坑にいるだろうことは分かっているからだ。そして少女は男たちに襲われる。それを助けたのはある老人だった。あの落盤事故で一人生き残り、世捨て人のようにして山で暮らしている男であった。少女のこともよく知っている。
彼が手にしているのは空気銃のみ。それに対して男たちは猟に入るという名目で山に来ているため、スコープ付きの猟銃や拳銃を持っている。老人と少女の追う男たちとの山中の孤独な闘いが始まる。
山岳といいながら、ただのそのへんの林の中の闘いである。これは山岳とはいわないだろう。少女が最初少し回転の遅い女の子に見えるのだが、次第にしまった顔になっていくのが不思議だ。見ているこちらの問題か、演技の故か。
映画というよりテレビドラマ並みのレベルだが、出だしで「山には魔物が出る」などという噂がささやかれるシーンがあり、いつ魔物が出るのかずっと期待していたので、最後まで観てしまった。
『7ミニッツ』2014年アメリカ映画。
監督ジェイ・マーチン、出演ルーク・ミッチェル、ジェイソン・リッター他。
こんな展開になるとは思わなかった。小さな金融機関に仮面を被った三人組の強盗が押し入る話で、警察が来るまでに金を奪い、逃げるまでのリミットを7分と設定して強盗に押し入った彼らは想定外の事態に出遭う。誰も傷つけるつもりはなかったはずの三人だったのだが・・・。
舞台は小さな町で、住人はみな顔なじみである。強盗に入るまでの成り行きがフラッシュバックのように挿入されていく。そして想定外の事態が少しも想定外ではない、必然だったことが次第に明らかになっていく。彼らの計画がいかに杜撰だったか、そしてそのためにどれだけの人たちが危難に遭うことになったのか、そして彼等自身も大変な災厄に見舞われてしまうのだ。
ラストは現実なのかサムの夢想なのか。映画の出来は悪くない。
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