映画『釣りキチ三平』2009年
監督・滝田洋二郎、出演・須賀健太、渡瀬恒彦、塚本高史、土屋太鳳、香椎由宇ほか。
矢口高雄の漫画を原作とした実写映画。原作の漫画は私が学生時代に愛読していたからずいぶん古いけれど、自分なりのイメージはしっかりと記憶にある。そして主人公の三平三平(みひらさんぺい)役の須賀健太はそのイメージに全く違和感がないのが嬉しい。
これを実写化するのは下手をすると陳腐になりかねないからずいぶん難しいはずだが、それなりの映画に仕上げているのは監督の滝田洋二郎の手柄だろう。この直前に滝田洋二郎は『おくりびと』でアカデミー賞の外国語映画賞を受賞しているからのっていたのだ。この人の作品は『陰陽師』、『壬生義士伝』、『阿修羅城の瞳』、『天地明察』などを観ているが、外れがない。
この映画には都会と田舎、都市と自然、人間と自然との関わり、自然の奥深さが説教臭くならない範囲でやさしく描かれている。都会でストレスフルに生きることも人間の生きがいだが、自然に囲まれて厳しいけれども案外豊かに暮らせる里山の暮らしがときには疲れた都会人を癒やすものであることを教えてくれるのだ。こどもには都会と田舎の両方を経験させることがとても大事なことなのではないかとあらためて思う。
三平の幼なじみとして土屋太鳳が出演しているが、ほぼ十年近く前のこの映画のときは十四五歳だろうか、とても可愛い。香椎由宇はあまり好みでない女優だがこの映画では三平の姉役で、鎧に蔽われたかたくなな気持を次第に和らげていく心の変化を見事に演じていて評価が変わった。さすがオダギリジョーのハートを掴んだ女性だけのことはある。彼女の役柄こそがこの映画のテーマを体現しているのであり、そこがお粗末ならこの映画はぶちこわしだったはずだ。
雨が多かったので映画三昧だったし、そのあとも暑いので家にこもってたびたび映画を観ているが、それぞれについてブログに書いているとそれが次第に億劫になってくる。本の場合はその本を反芻して考える機会になるので良いのだが、映画は楽しめば良いので反芻の必要は普通無い。逆にブログを書くために映画を観るような気分になっては映画を観る気も削がれてしまう。というわけで、書きたいものだけ紹介している。
ところで釣りキチのキチはキチ○○のキチで、ことば狩りを正義だと勘違いしているマスコミはこの題名を嫌うことだろう。鬱陶しいことである。ことば狩りについては前にも書いたのでここではこれ以上書かない。
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