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2018年7月14日 (土)

橘玲『朝日ぎらい』(朝日新書)

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 前書きに著者が明記しているが、この本は朝日新聞を批判したり擁護する本ではない。副題にある「よりよい世界のためのリベラル進化論」がずっと良く内容を表している。しかしそれでは本は売れないだろう。リベラル、リベラルというが、リベラルとはなにか、そのことをとことん解析している。引用したり資料として使われる実験的なデータは社会心理学的なものが主である。

 この本をかみ砕いてまとめることは私の手に余る。正直に認めるとそこまで読み切れていないのである。とにかく面白いので十分理解しきれないままどんどん先へ読み進めてしまったのだ。良く理解できないのにどうして面白いのか。目からウロコの落ちる思いのする部分がたくさんあるからだ。思い込んでいたことを見直さざるをえないことに快感を感じさせてくれる本は、私にとって面白いのである。

 日本のリベラルがあまり多くの若者の支持を得ていない理由が明快に説明されていて、まずうならされる。世界が極右的になりつつあるように見えるのはなぜなのか、なぜ安倍政権が多くの若者に支持されているのか、そのことも全く新しい視点から見直すことが出来る。実は世界はリベラル化しているのだ。そして右傾化はその反動としてのバックラッシュであるという。

 とにかくいわれてみるとなるほどと思うことが次々にあって読み進めてしまうのである。全体をもう一度咀嚼し直してものの見方の道具のひとつとしてこの本の視点を自分のものにしたいものだと思う。そのためにはもう一度読み直してみる必要がありそうだ。

 ところで著者の本を読むのは初めてではないのだが、名前を「たちばなれい」と読んで、女性だと思い込んでいた。この本を読んで女性とはとても思えないことに気がつき、確認したら「たちばなあきら」と読むこと、男性であることを知った。恥ずかしい。

 あとがきに朝日新聞について辛口の一文がある。リベラルの旗手を自認する朝日新聞のダブルスタンダード批判である。問題は「ネトウヨ」の攻撃など、外部にあるのではなく、内部にあるのだという指摘は痛烈である。

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