古い地図
父母と同居していた弟が、二所帯住宅を一軒の家に統合するために大幅な改築をしていて、ほぼ完成が近い。両親のところに私の蔵書をメインにしてかなりの本があったが、どうしてもとっておきたいものは当然だが私が引き取り、それ以外は自由に処分してもらった。
文学全集の中にはとっておきたいものもあったが、きりがないので捨ててもらい、百科事典も捨てた。その小学館の原色百科事典は、揃えたとき以来それを開くのはほとんど私だけだったから、色あせて古びた今となっては飾りにもならず、場所ふさぎなだけなのである。
その別冊として大判の日本地図と世界地図があるのだが、そのうちの日本地図だけを残してもらって引き取った。高さが四十センチ近くある重い本で、発行は昭和四十二年となっている。つまりその前の日本地図なのであり、いまでは貴重なものである。
地図を見るのは好きだから、全国の代表的な市はどの県のどのあたりにあるのかおおよそ分かっていた。ところがこの何十年かに、どんどん統廃合や改名で見たことも聞いたこともないような市がたくさん出来たために、自分の知識がほとんど役に立たなくなった。
なんだこの市は、と思うような市ばかりで浦島太郎の気分である。そこで昔の自分の古い知識の地名と新しい地名との突き合わせを楽しむためにこの古い地図を残したのである。子供たちの高校時代や中学時代の地図帳も少し残してあって、時系列に並べればその変遷をたどることが出来ないことはない。
自分が旅で通過した場所をたどりながら地名の変化も調べると、案外時間と空間を同時に眺めることになるのではないか。そんなことを考えている。
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