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2018年7月18日 (水)

映画『ザ・シューター 孤高のテロリスト』2013年デンマーク

監督アネット・K・オルセン、出演トリーヌ・ディルホム、キム・ボドゥニアほか。

 社会悪に対するテロは正義か?これはテロではないが、チャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』という映画を思い出す。街のチンピラたちとのいざこざをきっかけにして逆恨みされて妻子が彼らに襲われた男の復讐譚(そういえば『マッドマックス』も同じである)だが、復讐が次第に野放しにされている社会悪への制裁という、正義の個人的行使の様相を呈していく。これには『ロサンゼルス』、『スーパー・マグナム』以下、だんだんエスカレートしていく続編が作られていて、次第に彼の怒りに共感して感情移入してしまう。それは自分の怒りの代わりに彼が悪に制裁を加えることで得られるカタルシスが快感なのであり、ある意味で危険なことでもある。

 とはいえこういう映画や物語を楽しむことで人は怒りのエネルギーを発散させるという働きもあり、結果的に現実の怒りの行使を抑制する働きもあるのかも知れない。人は正義の確信があるとはいえ、なかなか実際に法を犯すことは出来ないものだ。しかし人間にはさまざまな人がいて、中には発散するよりも、内圧を高めて実行に移す場合もあるのが恐ろしい。

 環境保護を謳っていたデンマークの新首相が、経済的な面とアメリカの圧力もあり、グリーンランドなどの原油生産拠点を推進していこうとする。国民の中には反対意見も多いが、環境に問題は無いようにすると言明する。しかしその計画に何らかの情報隠蔽があるのではないかと追求する女性ジャーナリストのミア(トリーヌ・ディルホム)。

 そんなときその計画に関係する人物が狙撃を受ける。弾は逸れるが、それは抗議のための警告だったからだ。そしてその狙撃犯からミアに連絡が入る。自分の持っている情報を渡すので発表して欲しいというのだ。渡された情報には計画による環境汚染のおそれについての詳細なデータが含まれていた。しかしその情報は政府によって一蹴されてしまう。

 そしてテロリストは本格的に始動する。

 社によりミアに課された使命と彼女に対する政府のさまざまな圧力、そして孤独なテロリスト、ラスムス(キム・ボドゥニア)の行動が交互に描かれていき、ついに正義の銃弾は放たれる。

 彼女は個人的に優先させなければならない大事な用事を抱えていた。そのことは冒頭から明らかにされているのだが、社会的使命、会社の命令などが彼女の最も大事なことから彼女を遠ざけていくという焦燥感が、彼女のジレンマとして常につきまとう。上手い設定である。

 デンマークという国は特異な国で、ある意味では日本に似ているところもあると思っている。私個人としても、アンデルセンやキルケゴールを産んだ国としてヨーロッパで最も興味のある国で、いつか行きたいと思いながら果たせずに終わるようだ。そのデンマークのドラマや映画はおおむね出来が良くて面白い。この映画も大作ではないが見応えのある好い映画だった。

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