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2018年8月 5日 (日)

高嶋哲夫『官邸襲撃』(PHP)

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 著者の本を以前読んだことがある。パニック小説だった。パニック小説と言えば、開高健の文字通り『パニック』という題名の小説があり、私の開高健との出会いの小説で忘れられない。エンターテインメントでパニック小説は定番ジャンルであり、読者を臨場感のある現場に引き込むには著者の力量が必要である。この高嶋哲夫にはその小説が面白かった記憶があってこの本を手に取った。

 この本はパニック小説ではない。首相官邸で日本初の女性の首相が来日したアメリカの国務長官一行と会談するのだが、その首相官邸が武装した50人あまりのテログループに占拠されてしまう。日米双方の要人警護者はほとんど殺されてしまい、報道関係者を含む百人あまりが人質となってしまう。

 唯一無事に生きのびた女性警護官である夏目明日香がたった一人でこのテログループに立ち向かうことになる。まさに『ダイハード』の女性版である。もちろん外部では人質の救出のためのさまざまな作戦が練られていくのだが、状況は二転三転する。プロのテログループに対し、一介の女性警護官が立ち向かって対等に戦うなどというのはちょっと無理がないではないが、エンターテインメント小説だからそれで良いのだ。面白くないわけはないのである。 

 テログループの目的はなんなのか。なぜわざわざアメリカの国務大臣が来て警備が強化されている中でテロを行ったのか、しかもロケット砲まで含めた大量の武器をどうして日本に持ち込むことが可能だったのか。それらはすべてプロローグに伏線として書き込まれている。半分以上読んでからプロローグをもう一度読み直すとほぼ全体像が理解できるはずである。謎解きの話ではないから、読み進めたあとに全体を把握すると、テロリスたちの行動やアメリカ側の動きの理由が見えてくるはずである。

 多少のことは目を瞑りさえすれば、映像的でとにかく楽しめる。

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