戦争に関する番組を観た
昨日は録画していた戦争に関する番組を一日観ていた。毎年夏になれば終戦記念日の前後に戦争に関する特集番組がいくつも放映される。今まではそれをめったに観なかった。理由はいろいろある。その視点に微妙な違和感があったりすることもあるが、多くは自分が戦争の現実を直視するのに耐えられなかったからかと思う。
それが早坂暁の『新・花へんろ』というドラマを観たのをきっかけにして、今年はそのような番組をずいぶん観ることになったのは、戦争の現実をようやくある距離を置いて見つめることができるようになったからかも知れない。
春に放映されたものでその再放送を録画していた、NHKの『どこにもない国(前・後編)』というドラマは、戦後満州からの日本人引き揚げに関する実話をもとにしたものだ。丸山邦雄という人の手記をもとにした、子息の邦昭氏の原案をドラマ化したものだ。終戦に先立つ八月六日にソ連軍が突如満州に侵攻、そのときの惨禍が控え目ながら生々しく再現されていた。日本人の引き揚げが時間とともに自然に行われたわけではなく、それを実施するために命がけで奔走した人たちがいることを明らかにしている。忘れてはならない人たちが忘れられていることを知らされた。
関東軍は日本人を守ることなく逃げ出し、残された人びとが辛惨を舐めたことは知っていたが、それをドラマで直視するのはあまりにつらいことであった。どれだけの人びとが祖国に帰れずに無念の死を遂げて現地に眠っていることか。
NHKの『ためしてガッテン』のあの小野文恵アナの祖父がフィリピンのルソン島で戦死している。その父の最期を知るために母とともにルソン島を訪ねたドキュメント『祖父が見た戦場 ルソン島の戦い20万人の最期』は、戦争末期、ほとんど戦力を喪失して無力と化した日本軍がどんな悲惨な末路を迎えたのか、それを明らかにしていた。ルソン島の戦場だった地に線香を上げて手を合わせる小野文恵さんの気持ちは、すべての遺族の気持ちとつながっているだろう。
最期にやはりNHKのドキュメント『ノモンハン 責任なき戦い』を観た。司馬遼太郎があの昭和の戦争を象徴する戦いだったとして、これを文章にしようと資料を集めているうちに、あまりにその日本軍上層部の異様な体質、システムの愚かしさに脱力して、ついに書くことを放棄したことは有名である。彼が兵士として体験したことばかりではなく、多くの人間の死が無意味に見えてしまうことに絶望したのではないだろうか。
戦いの詳細、ソ連軍と日本の装備の違い、兵力の差、そしてそれを何ら教訓とすることなく太平洋戦争に突入した愚かさ。しかもノモンハンの敗北の責任を責任者たちが誰もとらずに、現場で指揮を執っていた将校に暗に自決を迫って責任を負わせるという、あり得ないような無責任さが暴露されていた。
戦後、それらの責任者達や兵士の語ったことばが録音テープに残されていて、責任者達の知らぬ存ぜぬ、自分には責任がないと平然と語るのを聞かされて、司馬遼太郎の絶望の深さの一端を痛切に感じた。確かにここに日本の軍部の無責任体質がはっきりと表れている。そしていまの官僚にその体質が歴然と残っていると連想するのは想像のしすぎだろうか。
ノモンハンでの、そしてその後の戦争遂行で最も責任を負うべき辻政信の責任をついに日本は問うことがなかった。戦犯とは彼のような人たちをいうのであろう。すでに戦犯は連合国の考える戦犯として処断された。しかし日本人が、日本人が蒙った死ななくてよかったはずの無数の人びとの死の責任を負うべき彼等に問うことはいまだになされていない。無念は晴らされていないのだと思った。
« チベット 夢の配達人 | トップページ | 夏バテか »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 『ソラリス』(2024.10.10)
- 『雷桜』(2024.10.09)
- 『Dr.パルナサスの鏡』(2024.10.08)
- 前回に続いて(2024.10.04)
- 『フック』(2024.10.04)
コメント
« チベット 夢の配達人 | トップページ | 夏バテか »
私もこのノモンハン・・・見ました。
死んでいった人が可哀想になりました。虚しさを感じるってこのような事ですね。
も~戦争はしてはいけない!!!と心から思います。
投稿: マーチャン | 2018年8月20日 (月) 09時06分
マーチャン様
どんな理由で戦争を始めたにしろ、負けたときにどうするのか、どう戦争を終わらせるのか、全く考えないで戦争を続けた人びとの責任が日本では問われていません。
少なくとも半年前に降服していたら、無駄な死は半分で済んでいたでしょう。
それでも責任を負わずに畳の上で無事に往生した人がたくさんいました。
その人達の代わりに日本人すべてがその責任を問われ続けているということです。
投稿: OKCHAN | 2018年8月20日 (月) 09時37分