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2018年8月 8日 (水)

ピアスに文身

「身体髪膚これを父母に受く、あえて毀傷せざるは孝の始めなり」
とは孝経のことばであるが、大声で独り言を言う父が好きなことばで、たびたび聞かされたからこの歳になっても耳に強く残っている。父は戦争に行って、多くの戦友が死んだ中で辛くも生き延びて帰ってくることができた。だからこのことばに対する思いは私の想像を超えたものがあると思う。

 戦争での負傷は他人が自分を害するものである。自傷は父にとって論外の悪事であるだろう。その父に先のことばを刷り込まれた私であるから、当然同様の考え方である。

 ピアスとは穴をあけて通すという意味の動詞らしい。一般的には身体の一部に穴を貫通させること、そしてそこに装身具をつけることまたはその装身具のことをいうようである。耳たぶなどに穴をあけて装身具を通すのは古代からある風習であるようだ。耳のピアスはよしとしよう。どん姫が高校生の頃(中学生だったか?)黙ってピアスをしていることに気がついたときには哀しかったが、叱りとばしたりしなかった。なんだか身体の力が抜けた気がしたことだけ覚えている。

 しかるに鼻にピアスや唇にピアス、果ては乳首にピアスやまさかと思うところにピアス、などというのを見聞きすると、なんだか自らを自傷して家畜並みに貶めているようにしか見えない。他人がしているのを見て格好が良いと感じるのか、または感じさせられているのか知らないが、私から見れば目を背けたくなる身体装飾でしかない。

 文身とはいれずみのことである。なんだか映像を見ていると世界中で文身をしている人の姿を見るようになった。自分を飾るための究極の方法だと思っているのだろうか。魏志倭人伝には日本人が顔面にいれずみ(黥面)し、身体にいれずみ(文身)していると記されている。当然野蛮人の風習として記録しているのだ。

 中国ではいれずみは罪人に行うものだった。罪を犯すと顔面や腕に刺青が入れられ、犯罪者であることが誰にも分かるようにされていた。日本でも同じことが行われた。まっとうで無い人、というしるしである。それを敢えて男伊達として自ら身体に刺青を入れる者たちがいた。自分はアウトサイダーであることを誇示したのである。

 アウトサイダーは市井の規範を逸脱することを自ら表明する者であることの表明である。そのことは市井の人々とアウトサイダーの双方に暗黙に了解されていた。

 湘南の海岸で泥酔したりスピーカーで騒音を鳴らして、海水浴を楽しみに来た人々の迷惑になっている連中がニュースで報道されていた。たいていいれずみをしていた。彼等はアウトサイダーを自認しながら公然と市井の人々に迷惑をかけている。自ら排除を懇請しているらしく見える。公然たるアウトサイダーなどアウトサイダーであるはずがない。ただの鼻つまみである。あの某山根氏もそうか。いまはその境界が融解している。誰がその境界をあいまいにしているのか。

 子どもの頃、傾いてつぶれかけの長屋になにをして暮らしているのか分からない家族が暮らしていて、その親父さんが背中にいれずみをしていた。歳をとっていたそのおじさんのいれずみはみすぼらしく見えた。いま若い人の背中のいれずみはそれなりに人に見せたくなるものかも知れないけれど、歳をとって肌に張りがなくなったとき、なにもない年寄りの肌と比べて、そのいれずみの肌はみすぼらしく、いっそう薄汚いだろう。

 これはピアスや文身の是非を論じているわけではない。私の好悪とその理由を語っているだけである。

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コメント

孝経のこの言葉 私もこの言葉大好きです
入れ墨 そく ヤクザ 
私は短絡的ですがこう思っています
ただ 最近は外国のスポーツ選手が体にたくさんの入れ墨をしているのを見て
違和感が無くなってきている自分が少し恐ろしいです

テニス友達は島根の出身です。
身内に漁師の方がいて、遭難した時に身元が分かるようにと、刺青をする・・・と、
言っていました。

最近 世界のスポーツを見ると・・・刺青をしている人が多いですね。
ヤッパリ私は 刺青は好きではありません。

刺青があるとMRIの検査をしてもらえないことがあります。
皮膚の感覚がおかしくもなるそうです。
自己責任ですから構わないのですが、リスクも考えてほしいものです。

イッペイ様
私はいれずみ、男の長髪、ピアスに不潔感を感じてしまいます。
それは見た目だけではなく、精神的に「飾る」ことへの不快感かも知れません。
やはり清潔感のあるほうが美しいと思います。

けんこう館様
髪を不自然な色に染めひとがごく普通に見られるようになりました。
異様なものに見える私は時代遅れなのでしょうか。
将来は日本もいれずみやピアスが当たり前になるかも知れませんが、あまり見たくないと思っています。
どこかでおかしげな恰好を流行らせようと唆す人たちがいるような気がします。
ズリ下げズボンのように、流行らせておいて陰で嗤っている人たちがいるのではないでしょうか。

マーチャン様
多分特別な集団に属すると言うことの目印として、いれずみを入れるということはあったと思います。
いれずみを下スポーツ選手が当たり前に見られるようになっているのは、一種の流行り物なのか、それともこれからごく普通に見られるものになってしまうのか。
マーチャン様と同様、私にはいれずみは美しいものとは思えませんし、好きではありません。

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