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2018年8月 1日 (水)

小川糸『にじいろガーデン』(集英社)

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 同性愛については知りたいと思わなかったので、その関係のことが書かれている本にはお近づきにならないようにしてきた。それに同性愛の物語の登場人物の立場に立って感情移入する、ということが困難だとも思っていた。

 この本のテーマが同性愛であり、家族愛であることは読んで初めて知った。小川糸さんの本だから手に取ったのである。小学生の草介という少年の母親であり、離婚寸前で悩んでいた泉という中年女性と、千代子という女子高校生の出会いから始まる。千代子は駅のホームで飛び込み自殺をしようとしていた。その彼女を止めたのは誰か。冒頭のそのシーンが印象的である。

 考えてみれば男は行為をするときに相手の、つまり女性の気持になろうとすることが(不完全ながらではあるが)、ある。女性がどうかは知らない。あまりないような気がする。女性は自分自身の内面に向かうのではないか。そうだとすれば、レスビアンの場合は相手(もちろん女性)の気持になろうとするところがあるのではないか。ある意味でそれは男の視点を持つことではないか。よく知らないけど。

 危機を脱した三人は新天地を求めて星空がきれいな山里に移住することを決意する。新たな家族の誕生である。やがて千代子が出産し、宝という娘が生まれ、家族は四人になる。どうしてレスビアンの女性に子どもが生まれるのか、それは物語の中で語られる。その家族がさまざまな障害を乗り越えて成長し、草介少年は大人になり、宝も大人になっていく。それはごく普通の家族と同様であるともいえるし、障害が多い分だけ絆が強いともいえる。

 外部からの障害以上につらいことが起きる。そのことは読んでいる方もつらい。私でもちゃんと感情移入していたのである。そのことをすべて踏みこえて人は生きて行かざるを得ないし、試練こそがその人を大人にしていく、つまり人間にするのだ。人生は良いことばかりではない。良くないことの方が多くてしかも重いのである。

 人は強くなければ生きていけないが、強さだけでは生きられない。やさしさはときに他人を生き易くさせるが自分自身を疲れさせる。やさしさだけでは人は生きられない。それぞれの個性が支え合い、家族が思い出を紡ぎ出す。さまざまなことが思い出としてキラキラと輝く。彼女たちが移り住んだ山里の星空のように。 

 読んでよかった。

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