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2019年2月16日 (土)

映画『バイロマニアック 炎の中の獣』2016年ノルウェー

監督エーリク・ショルビャルグ、出演トロン・ニルセン、リヴ・ベルンホルト・オーサほか

 人間がある一線を越えて奈落の底に転落していく姿を見るのは恐ろしい。どうして、と問う前に、自分だっていつそうなるか分からないことを内心では気付いているからだ。

 この映画はノルウエーの田舎の800軒ほどの集落で起きた放火魔の話である。冒頭に老夫婦の家が何者かに襲われ、油をまかれて燃やされるシーンから始まる。二人の安否を明らかにする前に、その三週間ほど前へと時間は遡り、一人の少年が林の中で木ぎれを集めて火をつけるシーンに変わる。

 最初から映画を観ている人には、放火魔は誰か分かっている。その集落の消防団の団長の19歳の息子である。その息子は子どもの頃から父の消化活動を手伝い、父が誇りである。高校時代は学業も優秀で、両親の自慢だったのだが、最近家の中はギクシャクしている。息子がなにを考えているのか父も母も分からなくなっている。この年齢の子供なんてそんなもの、といえないことはないが、それにしてもいささかとりつく島がなさ過ぎるのである。

 それでも火事が起きればわが家に置いてある消防車を出動させ、父と息子は火事場に飛んでいく。

 その親子関係、近所の様子、そして息子の交友関係などが淡々と描かれ、その合間に放火のシーンが映される。息子が内部に沈潜していくに従い、放火はしだいにエスカレートしていく。見ているこちらもいつの間にか放火犯である息子に同期していき、だんだん火が燃えることに興奮するようになるのが恐ろしい。

 森や家が燃えるシーンだけがテンションが高く、それ以外は意図的にボソボソとした小声の会話の連続で、物語は淡々と進んでいく。まず彼の犯行になんとなく気がついたのは母親である。実は父親もそれを感じていたけれど、それを直視することができない。自分が父親なら同じように告発を逡巡するだろう。

 最後に息子は父親の告発で逮捕されるのだが、そのときすでに彼の自我はほとんど崩壊している。こういう加害者の身内がどのような立場に立つのか、ラストに町へ買い物に出た両親と村の人々の視線の交錯がつらい。母親の絶望に歪む顔がほんとうに切ない。

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