宮崎正弘『AI監視社会・中国の恐怖』(PHP新書)
著者の本はふつうに読むと嫌中本にみえるし、そう受け取る人、ときにはそう決めつける人もいるだろう。中国の、問題ばかりを取りあげて悲観的な将来を語っているからである。
しかし感情的に、根拠もなく、中国の将来が悲観的であってほしいから悲観的に書いている類書とはまったく違い、著者の本にはそのような予測を語るための中国の歴史に対しての深い知識、現状についての豊富な情報網、さらに中国だけではなく世界全般にわたってのバランスの取れた目配りが伴っていると私は思っている。
著者が現在の中国の情報についてこれだけ詳しいのは、彼自身も中国に何度も足を運び、人的ネットワークをたくさん維持しているからなのである。中国政府の流す情報を垂れ流しているだけの日本のマスコミよりは、はるかに参考になる。
私も中国が好きだから何度か足を運び、彼の見方の真似らしき視点で中国を見、中国のニュースを読んできたので、日本のマスコミよりは著者の意見に与したくなるのである。
特に表題に挙げられているAI監視社会については、昨年の春、江南地方を駆け足で回ったときに自分の目で確かめ、強く実感したことでもあるからこの本に書いてあることの怖さはよく分かるのである。
この本には監視社会のことだけが書かれているわけではなく、中国の現状についての情報と、それから見える中国のこれからが分かりやすく説明されているので、中国がこれからどうなるのか参考になると思う。この本に書かれていることをベースに中国ニュースを見れば、その意味も多少は分かることもあるだろう。
監視社会をジョージ・オーウェルの『1984年』の描いた世界(いわゆるビッグ・ブラザーに支配される社会)になぞらえることが多い。若いときに読んで戦慄した記憶があり、久しぶりに蔵書のハヤカワ版のSF全集からその巻を引っ張り出して枕元に置いているのだが、ほかに読みかけの本が多すぎていつ読めるか分からない。
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