福田和也『平成批評』(角川新書)
江藤淳に見出されて福田和也が世に出たのが平成元年だという。この新書で、彼のとらえる平成という時代とそれまでの時代との違いが語られていく。平成という時代の風潮、文化、人間が批評されていくことで、彼自身も総括しているかのようである。批評は常に自分自身に立ち戻る。それなしに語る批評は空論だろう。
福田和也は優れた政治批評をするけれど、文芸批評に優れると私は高く評価している。その意見はしばしばずいぶん異なるけれど、彼の批評を読むことで影響を受けてきた。つまり補整を余儀なくされること、また反論を考えることで自分自身の考えの浅さを自覚することの出来る評論家の一人なのである。
寝床の横に目を向けたら、そこにあったのが『日本人の目玉』(新潮社)と『ろくでなしの恋』(メディア・ファクトリー)の二冊だったので、三冊並べて写真にした。ほかの二冊も今回パラパラと拾い読みしてみた。一から読み直したくなる。
日本人が目を背けているもの、そのことの本質が露呈したのが平成という時代だったという。全く同感である。正論の欺瞞性、不毛性を指摘し、それを乗り越えての正論を見出さなければならない時代が来ているようである。そうでないといまの世界の状況という荒波を乗り切ることが出来ないのだと強く感じた。
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