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2020年1月16日 (木)

室生犀星『あにいもうと』

 明治二十二年、室生犀星は金沢で生まれた。もと加賀藩士の父親が六十三歳の時に女中に手をつけて生まれたとされるが、その女中の名ははっきりしない。生後すぐに犀川の近くの寺院の、室生真乗と云う僧侶に渡され、内縁の赤井ハツが育てたと年譜にある。七歳の時に正式に室井真乗の養嗣子になり、戸籍上の室生姓を名乗っているが、小学校の原簿には赤井照道と記録されているという。

 

 この『あにいもうと』の主人公は赤座という名前だ。

 

 小説は自然主義文学そのものの体裁であるが、なんとなくそうともいえないものを感じる。ひとが生きることの厳しさを、主人公の息子や娘二人の生きざまに託して描く。堕落して底辺を彷徨う妹に対して、兄が罵倒するが、それに対しての妹のすさまじい啖呵は強烈なインパクトがある。怒りと哀しみが熱風のように吹き付ける。

 

 室生犀星の娘の室生朝子によれば、主な舞台は犀川のようである。川人足頭の赤座の自己中心的で暴力的な性格が、実は生き方の不器用さによるものであることが物語の進行と共に次第に分かってくる。大人になった息子や娘がいかに自分の意に染まないからといって、彼には如何ともしがたいのである。彼が無心に河原を眺める姿に彼の内面がチラリと見える。哀しみを押しつぶすように激しく生きざるを得ない男がそこにいる。それはやさしさなのか、それとも弱さなのか。

 

 その諦念を川が浄化するように見えながら、その川がまた自然の暴力をむき出しにする。人間はそれでも生きていくのだ。
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