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2020年2月 1日 (土)

藤原惺窩

 さまざまなことがさまざまに関連している。藤原惺窩が日本の朱子学の確立に関係している儒者であることは、高校時代の日本史で習ったことをおぼろげに記憶している。その藤原惺窩を江藤淳が『歌学から儒学へ』という文章で論じているのを読んだ。

 

 藤原惺窩がもともとは僧として仏教を学び、のちに仏教を離れて儒者になったことも意外だったが、それ以上にそもそも彼が冷泉家の正統の家門であることに驚いた。冷泉家といえば、現在唯一の公家屋敷を残していて、その蔵に所蔵されているさまざまな古文書や家具調度が悉く貴重なもので、かけがえのないものばかりであることは、テレビでたびたび紹介されている。もともと冷泉家は藤原定家などの歌学の家でもあるのだ。

 

 ただ藤原という名字が一致するだけだと思ったら藤原惺窩は本流だったのだ。

 

 そのような人がどうして日本朱子学の確立者になったのか、徳川政権の思想的基盤につながる朱子学を確立したのか。その生い立ちから冷泉家がその時代に置かれた難しい立場、二条家との激しい対立などが説明される。

 

 先般読んだ松本健一の『三島由紀夫と司馬遼太郎』という本で、三島由紀夫の依って立つ陽明学という思想の革命性と対比して朱子学が語られていた。体制維持の論理である朱子学と、革命的思想ともいわれ、維新の思想的背景となった陽明学が同じ儒学から発していることに興味がないことはない。

 

 しかし私にはいまさら朱子学や陽明学の思想を学ぶだけの能力も時間もない。ただ、藤原惺窩を論ずることで朱子学を、そしてそれが幕藩体制の維持に寄与し、それのアンチとして陽明学がさかんになって明治維新につながっていったことは最近ようやく知った。

 

 そういう思想的な背景が太平洋戦争にどうつながっていったのか、日本人の思想にどのように影響していったのか、西洋思想と日本思想とのせめぎ合いが明治時代の文化人の心的葛藤であったとすれば、それらの源流についての大まかな見通しくらいは知るべきであろうということを江藤淳や松本健一に教えらた次第である。歴史は現在の我々につながっている。その繋がりを知ることは大事なことだと思っている。
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