長山靖生『日本人の老後』(新潮選書)
著者は歯科医で評論家。この本が出版されたのは2007年。そのとき私は57歳で、60歳定年後の生き方を考える参考にしようと思ってこの本を購入して読んだ。団塊の世代は1947~1950年頃に生まれた世代だが、まさにその世代の定年リタイアが始まりだした頃である。その世代は人数が多く、企業や社会の中枢をなしてきた。それらが一斉にいなくなることでの空洞化を心配する向きもあった。彼らの蓄えたさまざまなノウハウが失われる恐れもあった。さらに当然のことに老後の年金をはじめとする社会保障費がこれから一気に増大することも分かっていた。
そういうわけで定年を65歳に引き揚げようという社会的な動きが次第に主流になりつつあった。それまでは若い人の雇用を生むために、年寄りは早く引退する方がよいという考えだったのが、次第に生涯働くことが美徳だというふうに世論誘導が始まった気がする。人手不足が将来予測されていたから当然かも知れない。そしていま世の中はその予測通りになっている。しかしその予測は人口構成を知るものなら誰でも可能なことで、その対策が不十分なのは不可抗力によるものではない。
この本やその他の老後の生活に関する本や年をとることについての本を何冊か読んで、自分なりに考えたことを思いだす。その時はこれからのこととしての老後だった。それが再読しているいまは既にその老後の渦中である。外から見るのと中から見ることの違い、そしてそれ以上に時代の変化のありようが実感された。
この本を読んだ時には、既に私は60歳でリタイアすることを決めていた。だから形の上だけでも慰留されたのを真に受けて定年を延長したりしなかった。その判断に後悔はまったくない。リタイアしてからやりたいと思っていたことをしているし、それに飽きてしまうこともない。いまならそもそも最初から65歳まで働くことが当然という時代だからなかなか60歳でやめられなくて残念なことになったかも知れない。よかったよかった。私は生来の怠け者なのであろう。
申し訳ないことに、本の中身について書くスペースがなくなった。
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