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2020年1月 2日 (木)

蕎麦の話

 新日本紀行で蕎麦がテーマの番組を放映していた。蕎麦については思い入れのある人も多い。しかしあまりに思い入れがありすぎて、講釈をするばかりでなくて、蕎麦はタレにつけずに水だけで香りをまず楽しめ、などとまでいわれると放っておいてくれといいたくなる。

 

 数年前、兄貴分の人と大阪の親友と三人で山形県の肘折温泉に泊まった。翌日肘折温泉から北上して私の父のふるさとの角川村(現在は最上郡戸沢村角川)へ向かったとき、峠を越えたら目の前は見わたすかぎり白い花が一面に咲く蕎麦畑で、親友が歓声を上げた。親友は蕎麦好きで自分で蕎麦を打つ。会社在職時代は年末の打ち上げには彼がうつ蕎麦を毎年皆にふるまうのが恒例になっていた。

 

 彼の目に映った蕎麦畑はどうだったのだろうか。蕎麦というと彼のその時の歓声を思いだす。

 

 ところで私の父はあまり蕎麦が好きではなかった。子供の時には蕎麦を飽きるほど喰ったらしく、そばがきなど特にうんざりだったようだ。蕎麦が味のよしあしでなくて貧しさの象徴として記憶に染みついてしまったのだろう。それが彼を中学に入ってすぐふるさとからの出奔を促したようだ。さいわい東京で学生生活をしていた長兄の元に転がり込んで苦学して中学に中途で入り、専門学校に進むことができた。その頃のことの思いをついに直接聞くことがないままに終わったことを今は残念に思っている。
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コメント

新年おめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。
蕎麦の話に惹かれるものがありました。
父親の蕎麦嫌いなこと、ふるさとを離れたこと、苦学をされたこと・・・
でも、その頃のことを父親から話を聞けないでおわってしまったこと。
親は苦労をなかなか自らは語ることなどないですし、子は子でそれを聞くのが
何かしら躊躇ってしまう・・・親子とはそういうものなんでしょうね・・・
俺の父親もそうでしたし、父との関係もそうでした。

でんでん大将様
子供の時には父にずいぶん可愛がられたらしいですが、思春期にはほとんど会話らしい会話がない関係になっていました。
ふつうの会話が復活したのは、自分に子供ができて、その名前を父に相談したことからでした。
志賀直哉の小説に思い入れがあるのは、その父親との関係に共感するからでしょう。
だから『和解』という短篇での父親との関係修復に自分を重ねて感動しているのかも知れません。
父と息子との関係はそもそもそういうものかという思いもあります。
息子は父親を男として乗り越えないと一人前の大人に慣れないものだと今は思っています。

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