住野よる『麦本三歩の好きなもの』(幻冬舎)
左・表カバー 中・ 中カバー 右・表紙
住野よるの本はすでに数冊読んでいる。一度新しい作家の本を読んでその作品が気に入るとつぎつぎにその作家の新作や旧作を読むようになるので、最近はあまり手を広げないようにしている。そのつもりだったのだが表紙(正確にはカバー)が眼に入ってつい手に取ってしまった。すらすら読める本なのだけれど何だかけっこうじっくりと読んでしまった。
大学図書館の新米司書の若い女性が主人公の物語で、若い女性がどんな思考回路でどんなことを考えているのか、それが描かれていて興味深く読めた。これも心理小説といっていいのだろうか。如何にもとりとめのないフワフワした思考なのだけれど、よく考えると案外一つひとつに本人なりのこだわりがあって可愛い。
主人公の麦本三歩はおっちょこちょいでよく失敗をするが、「三歩だから仕方がない」と許されるところがある。ひとりでに甘えが許される女の子だ。それが巧まざる計算になっているという見方も出来ないことはない。先輩のひとりに厳しくそれを指摘されるシーンもある。無意識だが本人にもまったく自覚がないわけではない。それを自覚してしまうとすべてがぎこちなくなるのは彼女の長所でもある。でもくよくよするのは一時で、美味しい物を食べればすぐ機嫌が直る。
男性から見れば、こういう女性はこちらが気配りする必要があるけれど、一緒にいても案外気楽で悪くないと思ったりする。気配りは必要だが気を遣わなくていい。つまり本人が思う以上に魅力的な女性と言える。分かる人にはわかるだろうか。
そういう女の子の日常が詳細にくどいくらいに叮嚀に描かれていて、普段私の知らない思考世界なのでそれなりにいろいろ考えさせて貰った。つまり面白かったのである。若い女の子も異星人というわけではないのだ。
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