北方謙三『楊令伝十 坡陀の章』(集英社)
宋という国は皇帝以下が連れ去られてしまって実質上金に滅ぼされてしまったが、金も宋の全土を支配する力はない。金に支配されている開封府から南京応天府へ逃れた宋の旧政府は新たな皇帝を擁立して宋の存続を主張している。童貫亡き後の宋禁軍は四分五裂して軍閥化してしまった。岳飛もそのひとつとして賊徒を討伐しながら力を蓄えている。
梁山泊は小康状態の情況の中で、受けた傷を癒やしながら国としての体裁を整えるべく各員がその役割を果たし始めていた。高齢化した者たちは身をひき、若者たちが成長し、世代交代が進んでいく。国力を維持し、民を生かしていくために楊令はかねてからの交易の道の確保に傾注する。西域と日本を繋ぐ道、それはシルクロードの復活である。遠大なその計画を真に理解するものは少ないが、夢は次第に現実化していく。
今回は各地の勢力図とその力の均衡が詳しく語られている。来たるべく風雲の前の静けさが描かれている。そもそも金は遼をなし崩しに打ち倒して出来た国で、内部に遼を抱え込んでいるとも言える。そんな中、北方にはモンゴル民族の台頭と集合の兆しがみられ・・・。
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