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2020年4月22日 (水)

北方謙三『楊令伝十二 九天の章』(集英社)

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 交易で国を成り立たせるという楊令の描く夢を理解する者と理解できない者とがある。それが梁山泊全体の世代交代の中で、古い世代にとっての微妙な違和感になっていく。人の生き甲斐は豊かであることと見切るのは、ある人々にとっては納得できないことだというのは分かる気がする。

 

 金の内部の権力抗争は続く。金の西側に傀儡政権の斉という国が立てられる。もちろん金そのものだが、住むのは主に漢民族であり、皇帝も漢族の劉豫である。そのほうが支配しやすいのである。さらに西、もと遼の耶律大石は各小部族を従えて西遼という国を建国。梁山泊の交易路の途中の西夏も内部の権力抗争が激しくなり、交易路を維持するために駐在する梁山泊の面々も翻弄される。

 

 金の先代皇帝の息子のひとりがその交易の隊商を襲う。辛くも荷は守り抜かれるが、犠牲も出る。金と梁山泊の間にも軋みが生じ始める。軍族の張俊、そして岳飛はそれぞれ兵力を貯え、勢力拡張を虎視眈々と狙う。その要にいるのが梁山泊であり、次第に戦雲は急となる。

 

 南へ落ち延びた宋の一部は江南に依り、次第に南宋という国のかたちを調えてくる。それを背後で動かし支えるのは青蓮寺の李富であり、そこには遠大なたくらみがひそめられている。

 

 金は中国全土を支配する力を持たず、あらゆる勢力が割拠支配する構図が続き、やがてその抗争が全体に及ぼうという気配が見えてくる。その先にあるのは希望的なものというよりも悲劇的なもののようである。
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