映画寸評(4)
『マレヒィセント』2014年アメリカ 監督ロバート・ストロンバーグ、出演アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、サム・ライリーほか
白雪姫の話は元々ドイツの民話らしいが、それをグリム兄弟が童話にした。これが元になって『眠れる森の美女』以来、たくさんのアニメや映画が作られていて、いくつか観たけれど、どれもそこそこ楽しめた。マレフィセントというのは白雪姫を呪う魔女の名前である。その魔女役をアンジェリーナ・ジョリーが熱演している。いままでにイメージされてきたマレフィセントという魔女を大きく異なるキャラクターにした物語で、大いに楽しめた。ラストのハッピーエンドにもひねりがあって、グッと胸に来る。観てガッカリすることはないはずだ。
『エリジウム』2013年アメリカ 監督ニール・プロンカンプ、出演マット。デイモン、ジョディ・フォスターほか
とっくに観たつもりでいたが、見始めたら初めてだった。近未来の、地球が汚染し尽くされ、疫病が蔓延した未来、社会の階層化はとことん進んで、エリジウムと呼ばれる地球上空の巨大宇宙ステーションだけには衛生的で豊かで平和な暮らしができる世界が造られていた。地球に住む人々はそのエリジウムに移り住むことを夢見るが、よほどのことがないとかなわない。ときに密航者がエリジウムに行くことを企てるが、徹底的に排除される。とはいえ地球からの食料やエネルギー、生活物資、機械製品などが供給されなければエリジウムは成り立たない。
つまりエリジウムは地球の人々を収奪して成り立っている特権階級の世界ということである。そのエリジウムの支配権を獲得すべく画策する悪役がジョディ・フォスターというのが面白い。その画策のためのプログラムの書き換えがきっかけで、エリジウムのコントロールに穴が開いてしまう。その穴の鍵を握るのが主人公のマット・デイモンで・・・というお話。ヨレヨレになったマット・デイモンが犠牲的に行動する姿は格好がいい。元々サル顔のマット・デイモンは好きなので、高得点が自動的につくのだ。SF好きなら文句なしに楽しめると思う。それにしても社会階層の二極化の果てはこうなるだろう、という近未来を見せつけられて、複雑な思いがする。好むと好まざるとに関わらず、多分世界はこれに似た状況へ進んでいくのだろう。
『サイド・エフェクト』2013年アメリカ 監督スティーヴン・ソダーバーグ、出演ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ・ジョーンズほか
サイド・エフェクトというのは副作用のこと。物語は前半部には二重三重に仕掛けが施され、その伏線がちりばめられているので、後半になって、あっと驚くことが続き、しかもそれもまた覆される、という楽しい体験ができる。癖のある俳優が演じることで、できのいい映画に仕上がっている。
精神科医(ジュード・ロウ)がたまたま診療することになった患者(ルーニー・マーラ)に新薬を投与したことで異常な事態が続き、ついに身の破滅寸前にまで追い込まれていく。それは新薬の副作用を隠蔽しようとする製薬会社の罠なのか、自分自身の医療ミスなのか。彼は必死で真相を求めて奔走する。やがて見えてきた驚愕の真相。ラストの彼の捨て身の報復が奏功するか・・・。楽しめます。
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未来映画は随分沢山見ました。
猿の惑星も驚きました。
題名は忘れましたが・・・人間が人間を食料にしているという映画もありました。
未来は暗い映画が多いいですね。
投稿: マーチャン | 2020年7月 5日 (日) 08時24分
マコママ様
『ソイレント・グリーン』という、チャールトン・ヘストン主演の映画ですね。
未来を描いた映画が暗いものが多いのは、現実を反映しているからでしょう。
いまのアメリカや中国やロシアがそのまま極端化していけばどうなってしまうのか、不安がいっぱいですからね。
明るい未来を描きようがありません。
投稿: OKCHAN | 2020年7月 5日 (日) 09時11分