検閲
これ以上のことをしたらまずい、という歯止めを見失ってしまった北京共産党政権は、ついに香港の一国二制度という国際的な約束を平然と反故にした。香港の市民たちは、いままで享受していた自由というものを失ったことの意味を身にしみて思い知らされることになるだろう。
そのことの不幸はわれわれ部外者にはなかなか実感できないけれど、今回われわれ部外者、つまり中国人ではない人々も、中国に対する言論の自由を失ったことをこれから実感することになりそうだ。中国人ではなくても、中国に批判的な発言をしたことが問題視された場合、その人が香港を含め中国大陸に行けば、その発言などが処罰の対象になって拘束される場合もあると今回法的に明記されたのである。
問題視するのは誰か。中国政府だということになっているが、膨大な情報のなかからそのような発言を探し出して問題であるかどうか判断するのは何万人といるとされるそのような検閲に携わる連中である。その面々にはどのような基準があるのか、一切不明である。しばしばその基準が人により大きく違うことは、過去の事実から推察できる。些細なことにこだわり問題視する人間もいれば、よほどの場合しか問題視しない人間もいるだろう。
運が悪ければ、全く意図に反した、中国のためによかれと思う発言すら曲解されて批判ととられる可能性もある。告発することが手柄である社会では、しばしばそれはエスカレートする。そこで身柄を拘束されても、その拘束がどういう根拠であったのか開示されることはないし、反論もまず許されないのがいまの中国である。まさに暗黒の国であると全世界にあらためて表明したのが今回の中国だ。
そしてこんなことを書いている私のことを、中国で誰かがチェックしていないとはいえない(AIでキーワード検索すれば検閲は簡単である)から、過去たびたび中国旅行を楽しみ、中国が好きで、中国がこうであって欲しいという思いがたくさんある私も、中国へ行くことはもう出来ないとあきらめざるを得ない。大げさに思えるかもしれないが、夫婦で老後の中国の暮らしを楽しんでいた人が、ココログに中国の生活の、日本との違いを書き綴っただけで、ネットを遮断されてしまい、身の危険を感じたという話を知れば、人ごととはとても思えないのだ。
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コメント
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おはようございます
今の中国を見ているとジョージ・オーウェルの『1984』が現実のものになったと感じます。
テクノロジーによる個人単位での管理などを見ると、そう思わざるを得ません。
悲しいのは、日本までそんな中国の真似をしようと、最近の安倍政権は思っているようだからです。
このままでは中国発ディストピアの世界構築になってしまうでしょう。
では、
shinzei拝
投稿: shinzei | 2020年7月10日 (金) 06時44分
shinzei様
安倍首相が独裁的管理国家を志向しているとは思えません。
それよりいま心配なのは、安倍晋三本人の政治的理念が取り巻きのなかの何者かによって抑えられたりゆがめられたりしているような気がすることです。
それだけ自分の主張が通せないのなら潔く身を引くか、そのような取り巻きを振り払うべきなのですが、その力を失っているのかもしれません。
中国の真似をしようとしている、というのがどのことをさしているのかよく分かりません。
推察すれば、開き直りというところでしょうが、比較するにも値しない気がするのですが。
投稿: OKCHAN | 2020年7月10日 (金) 09時50分
追伸で恐縮ですが、考えてみると、安倍政権は独裁的管理国家よりもグローバルな無国籍国家を目指しているように感じます。かつて安倍首相自身シンガポールでそんなことを言っていました。少なくとも左巻きの連中が言っているような「安倍政権は拝外独裁国家を目指している」だとか「安倍は国家主義者だ」ということは当たらないでしょう。
しかしこのことも日本という国の根幹を壊すような行為ですから以後、たとえ安倍政権が終わっても政権与党(どこになるか分かりませんが)をそうならないように国民は警戒すべきでしょう。
では、
shinzei拝
投稿: shinzei | 2020年7月10日 (金) 13時58分
shinzei様
体調を崩して第一次安倍内閣が崩壊して、安倍晋三氏にはしばらく充電期間がありました。
そこで考えた国のあり方というものは、そこそこしっかりしたものであった気がします。
しかし長期政権のためにその志が変形劣化してしまい、いまのていたらくのような気がします。
エネルギー切れ、疲労による集中力の低下を起こしているように見えます。
交代の時期かもしれません。
次を継ぐだけの人材がいない、と心配されますが、たいていなんとかなるものだと思います。
投稿: OKCHAN | 2020年7月10日 (金) 16時41分